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クレームを受けたライザップ「30日間全額返金保証」広告――どこが法的に問題か?
ライザップのウェブページ

クレームを受けたライザップ「30日間全額返金保証」広告――どこが法的に問題か?

赤井英和さんら有名タレントを起用し、だらしないお腹まわりが別人のように引き締まるというテレビCMが話題を呼んでいるトレーニングジム「ライザップ」。テレビだけでなく、インターネットなどでも大々的に「広告」を展開しているが、その一部に対して消費者団体から物言いが入った。

問題になったのは、ライザップが広告の中でうたっている「30日間全額返金保証」という表現だ。これが、景品表示法や特定商品取引法に違反する可能性があるとして、神戸市の適格消費者団体「ひょうご消費者ネット」が5月中旬、該当部分を削除するよう、ライザップに申し入れたのだ。

ウェブなどに掲載されている同社の広告では、プログラム開始後30日までの期間について、「内容にご納得頂けない場合、全額を返金させていただきます」と記載している。一方、ジム会則では、返金について「会社が承認した場合」としている。このようなズレがあることから、「消費者が誤認する」「誇大広告にあたる」と指摘されたのだ。

ひょうご消費者ネットの申し入れについて、ライザップは「法的根拠を著しく欠くものと認識している。専門家から法的見解を得て、行政機関に確認するなど、厳正な手続きを経て広告している」とホームページ上で表明した。はたして、今回の申し入れをどう見るべきだろうか。消費者問題にくわしい石川直基弁護士に聞いた。

●広告ルールと会則ルールが相違している

ライザップの広告には「30日間全額返還保証」と大きく記載されており、「内容にご納得できない場合、全額を返金させていただきます」と書かれている。この表示内容について、どう解釈すればいいだろうか。

「通常の契約では、例外的なケースを除いて、サービスに不満があったという理由で返金はしてもらえません。しかし、この広告の内容をみると、消費者は単に『不満がある』という主観的な理由で、また、自ら申し出るだけで、返金が受けられると理解するでしょう。さらに、転勤や妊娠といった理由であれば、当然、返金されると考えるでしょう」

石川弁護士はこう述べる。

「しかし、その一方で、ライザップのジム会則には、次のような記述があります。

『会社は、会員から返金の申し出があった場合、会員、トレーナー及び会社の三者で協議した上で、会社が承認した場合には、会員に対して支払済みの諸費用の全額を返還します』

また、『会員の転勤、引越し、仕事の都合、妊娠その他自己都合による退会の場合』は『返金を受けられない』という例外が設けられています。

つまり、返金してもらうには、『会社の承認』が必要ということなのです。また、転勤や引越し、妊娠といった事情では、返金を受けられないとされています。

したがって、広告に記載されている返金ルールと実際の返金ルールが相違しているといえます。その相違の程度は大きいので、実際よりも著しく『有利誤認』される表示に該当します」

●「消費者にわかりやすい広告を」

ただ、ネットなどに掲載されているライザップの広告をよくみると、「制度の適用には一部例外がございます。詳しくは当ジム会則をご覧ください」という表記もある。この部分はどう考えればいいのか。

「このように記載しても、ジム会則の内容が広告に明示されていない以上、『広告の内容が会則と相違している』という事実は変わりません。

返金ルールの適用に一部例外があることが記載されている点については、『いかなる場合も返金されるわけではない』ということが広告されているといえるのか、が問題となります。

これは、いわゆる『打ち消し表示』と言われるものです。ただ、今回のケースをみると、『何が例外となるのか』が広告から明瞭ではありません。また、『保証』という文字に対して、例外の文言があまりに小さく、『打ち消し表示』として適切ではありません。

しかも、一部例外としていますが、退会には会社の承認が必要であり、『一部』ということ自体が実際のルールと異なっています。

以上から、今回の『ひょうご消費者ネット』の申し入れには、法的根拠があると思います」

では、会社側はどのように対応すべきなのだろうか。

「法律上の問題を置いておいても、広告を見ただけでは、返金を受けられる場合と受けられない場合がわからないのは、問題だと思います。

会社側は、返金できない場合を列挙するなど、『消費者にわかりやすい広告』とする姿勢で、対応をしたほうがよいのではないでしょうか」

石川弁護士はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

石川 直基
石川 直基(いしかわ なおき)弁護士 米田総合法律事務所
平成10年弁護士登録。民事・商事・家事・行政・刑事各分野を取り扱うほか、雪印乳業食中毒事件、茶のしずく石鹸事件などの消費者製品被害弁護団に参加。日弁連消費者問題対策委員会委員として食品安全・表示問題、景品表示法等の表示規制の研究、立法提言に取り組んでいる。

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