弁護士ドットコム ニュース
  1. 弁護士ドットコム
  2. 相続
  3. 高齢父の「隠し子」が発覚! 20年前の不倫で… 見知らぬ「きょうだい」に相続させないとダメ?
高齢父の「隠し子」が発覚! 20年前の不倫で… 見知らぬ「きょうだい」に相続させないとダメ?
写真はイメージです(Taka / PIXTA)

高齢父の「隠し子」が発覚! 20年前の不倫で… 見知らぬ「きょうだい」に相続させないとダメ?

高齢父に隠し子発覚!

それだけでも家族にとっては「裏切られた」とショックなのに、「父が死んだら、その財産を隠し子にも渡さなければならないのか」とさらに落ち込むかもしれません。

父親に隠し子が発覚した場合、どうしたらよいのか。弁護士ドットコムにもさまざまなケースの相談が寄せられています。

ある相談者は、すでに仕事を退職した父親が20年前に不倫した際にできた子どもがいることが発覚したそうです。相談者は、もしも「隠し子」を認知していた場合、遺産相続はどうなるのかと心配しています。また、高齢の母親は離婚を考えておらず、不倫相手に慰謝料請求ができないか、考えているそうです。

見ず知らずの「きょうだい」にも相続させないといけないのでしょうか。また、父親が生きているうちに、何らかの「対策」はできるのでしょうか。森本明宏弁護士に聞きました。

●何もしなければ、「隠し子」も子どもと同じように相続

——父親が「隠し子」を認知していた場合、「隠し子」が相続する財産を最低限にすることはできるのでしょうか。また、父親が存命中にできる「対策」はありますか。

父親が「隠し子」を認知していた場合、法律上の父子関係が生じます。したがって、父親の存命中に何の対策も講じなければ、認知を受けた子は、あなたと同じ法定相続分での相続が可能となります。

認知を受けた子の相続分を最低限にするためには、父親が、認知を受けた子に対して遺留分(法定相続人として最低限保証された遺産取得分)を上回る遺産を相続させないという内容の「遺言」をする方法が考えられます。父親の子が、あなたと隠し子の2名である場合には、隠し子の遺留分は8分の1ですので、その限度まで相続分を抑えることは可能です

●不倫による損害賠償請求は20年で時効消滅

——20年前の不倫とのことですが、母親から不倫相手に慰謝料請求することは可能でしょうか。その際に、たとえば慰謝料の代わりに、隠し子の相続を放棄するよう求めることは可能でしょうか。逆に、「隠し子」が成人していても、これまでの養育費を支払うよう求められる可能性はありますか。

不倫のような不法行為による損害賠償請求権は、不法行為の時から20年間行使しないときは時効によって消滅します(民法724条2号)。したがって、20年前の不倫とのことですから、母親の不倫相手に対する慰謝料請求権は時効で消滅するおそれが高く、慰謝料請求は困難でしょう。

また、隠し子に相続の放棄を求めること自体は可能ですが、隠し子がそれを拒絶した場合には、それを強制する方法はありません。逆に、不倫相手から過去の養育費を求められることは、法的にはあり得ることですが、この養育費請求権も5年間の消滅時効が定められており(民法166条1項1号)、例えば生まれて以降の養育費を全て遡って請求するようなことはできません。

——もしも「隠し子」が相続人であることを知りながら、無視して財産を分与しなかった場合、どうなるのでしょうか。

「隠し子」が相続人であることを知りながら、無視して財産を分与しなかった場合、そのような遺産分割は無効となります。遺産分割の協議は全ての相続人の間で行う必要があるからです。

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

プロフィール

森本 明宏
森本 明宏(もりもと あきひろ)弁護士 四季法律事務所
愛媛弁護士会所属(2002年弁護士登録)。2010~2011年度、愛媛弁護士会副会長。2020年度、愛媛弁護士会会長。日本スポーツ法学会会員。

オススメ記事

編集部からのお知らせ

現在、編集部では正社員スタッフ・協力ライター・動画編集スタッフと情報提供を募集しています。詳しくは下記リンクをご確認ください。

正社員スタッフ・協力ライター募集詳細 情報提供はこちら

この記事をシェアする