人間、いつ死ぬかわからない。病気しらずな人でも、事故や事件に巻き込まれることはある。大きな事故や事件なら、実名で報道されることもあるし、そうなると名前や経歴が検索され、ツイッターやフェイスブックなどのSNSのアカウントが「発見」されるかもしれない。
最近は、SNSの投稿内容が「死後」になって、多くの人の目にとまるというケースもめずらしくない。SNSによっては、突然の死を想定したアカウントの「削除方法」が用意されているところもある。たとえばフェイスブックでは、家族や友人が申し出ることで、故人のプロフィールを削除したり、追悼ページに変えることができる。
では、SNSの利用者が、死を想定した設定などを一切せずに亡くなったら、そのアカウントは自働的に家族に「相続」されるのだろうか? だが、なかには、家族に知られたくない内容を書き込んでいる、という人もいるだろう。そんな場合は、事前に何らかの手を打っておかなければならないのだろうか。岡田崇弁護士に聞いた。
●SNSのアカウントは「相続」とはなじまないところも・・・
「民法では、『相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する』とされています(民法896条本文)」
このように岡田弁護士は説明する。そうすると、SNSを管理する権利も、遺族に承継されるように思えるが・・・
「しかしSNSは、インターネットを通じて、個人と個人が社会的に交流するものですので、その性質上、アカウントを遺族が承継することになじまないところもあります」
どういうことだろうか?
「たとえば、ブログやツイッターについて、本人が亡くなった後に、IDやパスワードを知っている遺族が『ユーザーが亡くなった旨』を告知するのはよくあることで、社会的にも受け入れられていることだと思います。
しかし、もしアカウントを相続した遺族が、本人が亡くなったことを告げないまま、生前同様に情報を流し続けたらどうでしょうか? こういったことは、社会的に受け入れられているとまでは言えないと思います」
●亡くなった人の「一身に専属した権利」は相続されない
こんなケースはあまり一般的ではないと思うが、たしかに単純に相続を認めるとすれば、「SNSのアカウントをどう使うかは遺族の自由」ということになってしまいそうだ。こうしたものについては、相続を認めないというルールはないのだろうか?
「先ほどの条文には、例外として『被相続人の一身に専属したものは、この限りではない』(民法896条ただし書き)とされています。
したがって、そのSNSのアカウントが、亡くなった被相続人に『専属』していたと言えるのであれば、たとえ遺族といえども承継されないと解釈すべきです。
実際多くのSNSでは、ユーザーが死亡したとき、アカウントをそのまま遺族に承継させるのではなく、アカウントを削除したり、死亡後の特別なページにしたりできるだけのようです」
岡田弁護士はこのような見解を述べたうえで、「最近は、ユーザーが亡くなったときにどのように扱うかを生前に指定できるサービスもあるようです。気になる方は、それらを活用されるのも一つの方法だと思います」と話していた。