他の男性と浮気していた妻と授かり婚で結婚したもの、やはり離婚したいーー。そんな夫が、「自分も浮気しているが、結婚前の妻の浮気を理由に、不貞された側として離婚請求できるのか?」と、質問を寄せた。
子どもは中学生と未就学児の2人。相談者によれば、「好きな人ができ、彼女との将来を真剣に考えております」という。現在は彼女と暮らしており、妻や子とは別居状態にある。
妻は「離婚には応じない」と話し合いは平行線のままだという。相談者は「一般的に有責配偶者からの離婚は認められないが、授かり婚時の妻の二股行為を理由に不貞された側として離婚請求ができるのでしょうか」と質問している。宮地紘子弁護士に聞いた。
●「結婚前の浮気は離婚事由とならない」
「法定離婚事由については、民法770条1項に規定があり、同1号には『配偶者』に不貞行為があったことが要件となっています。ここで、『配偶者』とは婚姻関係にある者のことですので(民法739条1項参照)、結婚前の浮気は離婚事由とはなりません。
そのため、夫が『授かり婚時の妻の二股行為』を理由に不貞された側として離婚請求をしても離婚事由には該当しません。妻が浮気をしたのは良いことではありません。ただ、法的にはそれを理由に離婚請求することはできないのです」
●有責配偶者でも離婚請求できる?
では、有責配偶者である夫が離婚を請求する場合、裁判所はどのように判断するのか。
「有責配偶者からの離婚請求については、離婚請求を容認することが著しく社会正義に反するといえるような事情が存在するかなどの観点から判断されます。
たとえば(1)別居期間が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当の長期であるか否か、(2)未成熟子が存在するか否か、(3)相手方にとって離婚が精神的・経済的に苛酷な状態となるか否か、などの事情です」
今回の相談事例では、中学生と未就学児の二児がいる。まだ社会人になっていない「未成熟子」の場合には、(2)の理由から認められないことになるのか。
「『未成熟』といっても、子が高校生以上であれば離婚が認められたケースもありますし、有責配偶者であっても、別居期間は10年程度で認められることが多いように思います。ただし、最終的には裁判官が諸般の事情を総合的に検討して判断することになりますので注意が必要です」