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リアル「ハレ婚。」? 日本で「一夫多妻」状態で暮らす人たちの法的問題
写真はイメージです(つむぎ / PIXTA)

リアル「ハレ婚。」? 日本で「一夫多妻」状態で暮らす人たちの法的問題

「一夫多妻制」は日本の法律で許されていません。「配偶者のある者は、重ねて婚姻をすることができない」(民法732条)と定められているからです。漫画「ハレ婚。」(NON著、講談社)では、ある地方自治体が、少子化や過疎化対策の特例として「一夫多妻制」を導入、1人の夫に対し、3人の妻で構成する「家族」の物語が描かれ、人気となっています。

最近、リアル「ハレ婚。」として注目を集めているのが、佐賀県内に住む西山家です。西山嘉克さんと妻2人、子ども6人の家族で、テレビやネットメディアで紹介され、話題となっています。嘉克さんと「第一夫人」は当初、法律婚をしていましたが離婚、「第二夫人」とも婚姻と離婚を繰り返し、今では3人が独身状態だそうです。それぞれの夫人は離婚後も「婚姻時の姓」を名乗ることで、全員が「西山」姓になっています。

他にも、一夫多妻状態の家族としてメディアで登場しているのが、香川県在住の藤田隆志さんです。藤田さんには法律婚をしている「本妻」と、戸籍上は養女として入籍している「第二夫人」、「第三夫人」がいるそうです。西山家と藤田家のケースは特殊であり、似ているようで、法的には異なっています。どのような問題があるのか、長瀬佑志弁護士に聞きました。

●複数の内縁の妻、「一種の重婚的内縁と呼ぶことができうるとする見解も」

西山家のようなケースは、第一夫人、第二夫人とも「内縁の妻」状態かと思われますが、法的にはどういう立場のものなのでしょうか?

「内縁とは、民法の婚姻の成立要件である婚姻の届出がないため正式な夫婦とは認められないものの、当事者の意識や生活実態において事実上夫婦同然の生活をする男女関係のことをいいます。

内縁として法的に婚姻に準ずる扱いを受けるためには、当該男女間に (1)婚姻意思があること、(2) これに基づいた共同生活があることが必要とされています」

では、同時に複数の内縁関係を持つことはできるのでしょうか?

「内縁の成立要件には、(1) 婚姻意思があること、が求められているのですが、現行法では一夫一妻制とされていることからすれば、複数の内縁が成立するかどうかが問題となります。

この点、内縁と認められるためには、一男一女の自由意思に基づく排他的独占的関係でなければならないとして、同時に複数の内縁が成立することはないと述べる見解もある一方、同一人が同時に複数の者と内縁状態にある場合も、一種の重婚的内縁と呼ぶことができうるとする見解もみられます(判例タイムズ1100号101頁『重婚的内縁の法律関係』)。

もっとも、後者の見解でも、内縁が事実上の関係を存立基盤とする以上、複数の内縁が同一の比重で内実を伴うものとして併存することは考えにくいとしても、先の内縁が形骸化する過程で後の内縁が成立したものと認められることはありうる、とも述べられていることには留意する必要があります」

●「養親と養子との間では婚姻することはできません」

西山家のように内縁関係にある夫婦の場合、相続はどうなるのでしょうか?

「仮に内縁関係にある状況で、一方の内縁配偶者(夫)が逝去した場合、他方の内縁配偶者(妻)の相続が問題となります。

もっとも、他方の内縁配偶者には、相続権が認められていません。逝去した内縁配偶者に法定相続人がいないのであれば、生存する内縁配偶者は特別縁故者として相続を主張する余地はありますが(民法958条の3)、法定相続人がいる場合には、あらかじめ生前贈与をするか、遺贈をするなどの手段を講じておく必要があります」

では、藤田家のようなケースは、本妻と第二夫人、第三夫人は夫の戸籍に入っていますが、法律婚の妻と養女2人という位置付けになります。この場合、財産などの相続はどうなるのでしょうか?

「前提として、養親と養子との間では婚姻することはできません(民法734条、736条)。もっとも、このような婚姻障害事由がある場合であっても、法的保護が問題となる場面に応じて、内縁としての法的保護が認められる可能性があると考えられています。

とはいえ、養親と養子の関係にある場合、相続が問題となる際には、養子に養親の法定相続権が生じることになるため、養子縁組をしていない内縁配偶者とは異なる扱いになるものと考えられます」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

長瀬 佑志
長瀬 佑志(ながせ ゆうし)弁護士 弁護士法人長瀬総合法律事務所
弁護士法人「長瀬総合法律事務所」代表社員弁護士(茨城県弁護士会所属)。多数の企業の顧問に就任し、会社法関係、法人設立、労働問題、債権回収等、企業法務案件を担当するほか、交通事故、離婚問題等の個人法務を扱っている。著書『企業法務のための初動対応の実務』(共著)、『若手弁護士のための初動対応の実務』(単著)、『若手弁護士のための民事弁護 初動対応の実務』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が書いた契約実務ハンドブック』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が実践している ビジネス契約書の読み方・書き方・直し方』(共著)、『コンプライアンス実務ハンドブック』(共著)ほか

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