インターネット上ではありとあらゆるものが流通しているが、米国のサイトではなんと「陽性反応の出た妊娠検査キット」が売買されているという。
CNNによると、ネット上の個人売買サイトで、こうした妊娠検査キットの売買が増えているという。とある「検査キット売ります」という投稿には「そろそろ彼氏にプロポーズさせたい? それともパパやママや友達にドッキリを仕掛けたい? 使い方はあなた次第」という説明文が記載されていたという。価格はまちまちだが、1本25ドルぐらいが相場のようだ。
そうした投稿の多くには「何の目的に使うかは当方は関知しません」と書かれているようだが、そんなものをわざわざ買うのだから「誰かをだますために使う」と考えるのが普通だろう。
もしこれを使って相手をだまし、結婚の約束をさせたり、堕胎費用を要求したりすれば「詐欺」にあたるのだろうか。また、そのような場合、こうした陽性反応済みのキットを販売した側も何らかの責任を問われるのだろうか。中川彩子弁護士に聞いた。
●お金を出させた場合は「詐欺罪」になり得る
「詐欺罪は、相手をだまして財物を交付させた場合(刑法246条1項)か、財産上不法な利益を得た場合(同条2項)に成立します。
ネットで入手した妊娠検査キットを使い、妊娠したと嘘をついて、交際相手などから堕胎費用名目の金銭を受け取ったとすれば、相手をだまして金銭という財物を交付させていますから、詐欺罪が成立しうるでしょう」
それでは、単なる結婚の約束なら、詐欺にはならないのだろうか。
「妊娠したと嘘をついて結婚の約束をさせたという場合は、財物を交付させたり、財産上不法な利益を得たというわけではないので、詐欺罪は成立しません。
ただし、嘘がばれた場合、婚約を破棄する正当な理由となりうる場合もあるので、婚約破棄されても文句がいえない可能性もあります」
●販売者側が罪に問われるケースとは?
一方で、「妊娠検査キットを販売した側」は、何かの罪に問われる可能性があるのだろうか。
「堕胎費用を請求するなどの『詐欺』に使用されることを具体的に知った上で販売し、実際に買った人が詐欺罪に該当する行為に及んだ場合は、詐欺罪の共犯となる可能性もあります。
しかし、そのような場合以外は、刑事上の責任を問われることはほぼないと考えられます」
日本では幸い、こうした検査薬が一般に流通しているという話は聞かない。男性側としては、陽性反応が出たと告げられた際に「良かったね」と、一緒に病院へ行けるような関係を築いておくべきと言えそうだ。