既婚男性の子を妊娠した女性が、「このままでは逃げられそう」と、弁護士ドットコムの法律相談コーナーに悲痛な相談を寄せた。相手の男性に、妊娠を告げると、連絡が途絶えがちになっているという。
そこで「弁護士さんに依頼して、相手に責任をとってもらうことは可能でしょうか?」と、質問している。このような場合、相手女性はどのような対応をとることが可能か。理崎智英弁護士に聞いた。
●拒まれても「認知の調停」を申し立てる
「まずは、相手に対して、任意に認知を求めることになります。相手が認知に応じれば、父親か子どちらかの本籍地の市区町村に対して、父親自身が認知届を提出することによって認知の効果が生じることになります」
今回の相談事例のように、相手が逃げ腰の場合には、任意に応じてもらうのは難しそうだ。その場合には、どうすればいいのか。
「相手が任意の認知を拒んだ場合には、子または母親が父親の住所地の家庭裁判所に認知の調停を申し立てることになります。
調停でも合意することが出来なかった場合、最終的には裁判を起こして、判決によって認知を認めてもらうことになります。これを『強制認知』と言います。裁判で認知が認められるためには、子と父親の親子関係があることをDNA鑑定等によって証明する必要があります」
認知されれば、養育費の請求はできるのか。
「できます。父親が養育費を任意に支払おうとしない場合には、親権者である母親は、父親に対して、養育費の支払いを求めて、調停や審判を起こす必要があります」
●相手の妻から慰謝料請求をされるリスクがある
なお、今回の相手は既婚者とのことだ。この場合には、相手の配偶者から慰謝料請求される可能性もあるのだろうか。
「相手が既婚者であると知っていた場合(知らなかったとしてもそのことに過失がある場合)には、相手の奥さんから慰謝料請求をされれば、それに応じる義務があります。
実際、私が過去に扱った相談事例でも、奥さんから慰謝料請求されることをおそれて、相手の男性に対して認知の請求を諦めた相談者もいらっしゃいました」