別居中の夫に、愛犬を連れ去られた。取り戻すためにはどうすればいいーー。インターネット上のQ&Aサイトに、ある女性が相談を寄せていました。
女性は結婚後、夫と共同で犬を購入。散歩や病院通い、シャンプーなどの世話は全面的に女性がしていたそうです。夫の不倫をきっかけに別居し、女性は今まで住んでいた家で、犬と一緒に暮らしていました。
ある日「荷物を取りに行きたい」と夫から女性に連絡が入りました。女性はそのとき外出中で立ち会えなかったため、断ることに。すると、家の鍵を持つ夫は「●●(ペットの名前)は連れて帰る!」とメッセージを残し、連れて行ってしまったそうです。
女性は「ペット(家族)が絶対に必要」と語ります。今回のようなケースで、女性は犬を引き取ることができるのでしょうか。長瀬佑志弁護士に聞きました。
●「ペットの引き取りを巡る争いは少なくない」
離婚する際、ペットを夫婦のどちらが引き取るかを巡って、争いになることは少なくありません。ペットを我が子のように可愛がってきた人からすれば、ペットを夫婦のどちらが引き取るかは、子の親権を巡る争いと同じように考えられるのかもしれません。
ですが、日本の法律上、ペットは「動産」、つまり「もの」として扱われることになります。したがって、ペットを夫婦のどちらが引き取るのかは、親権の問題ではなく、財産分与の問題として考えることになります。
財産分与とは、離婚する際に夫婦の間の財産を分けることです。夫婦が婚姻中に形成した財産は共有財産として、財産分与の対象になります。
今回のケースで考えると、相談者の女性が、犬を結婚する前に自分で購入していたのであれば、相談者の特有財産として財産分与の対象にはなりません。しかし、今回は結婚後に、夫と共同で購入したということですから、共有財産として財産分与の対象となります。
もっとも、財産分与の対象になるとしても、ペットは生き物であり、預金のように分割することはできません。どちらか一方がペットを引き取る代わりに、他方には代償金を支払うことになります。
相談者がペットを引き取ることができるかどうかは、(1)これまでの飼育状況や、(2)現在のペットの状況(夫婦のどちらになついているか)、(3)今後の飼育環境などを考慮して判断されることになるでしょう。
仮に、相談者がペットを引き取る権利があると認められたにもかかわらず、夫が引き渡してくれない場合、ペットは「動産」ですので、動産の引渡しを求める強制執行を申し立てることが考えられます。