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「妊娠しているのに…」喜びから一転、夫から「離婚したい」と言われて 弁護士の助言は
画像はイメージです(Ushico / PIXTA)

「妊娠しているのに…」喜びから一転、夫から「離婚したい」と言われて 弁護士の助言は

妊娠がわかった喜びを感じながらも、つわりによる体調不良にも悩まされる妊娠初期。そんなタイミングで夫から「離婚したい」と要求された——。なんとも非情な話ですが、弁護士ドットコムには同じような相談が複数寄せられています。

その相談の一部を紹介します(表現は一部、修正しています)。

「夫から離婚を告げられました。喧嘩は絶えなかったのですが、法的に離婚の正当な理由はありません。離婚し、中絶しますが、慰謝料は請求できるのでしょうか」

「度々離婚の話が上がっていましたが、何度も修復してきました。 2人目の子どもが欲しいと話し合い、子作りをし妊娠しました。ところが喧嘩したら『中絶をしろ。産んでも養育費は支払わない』と、怒鳴られました。どうしたらいいのでしょうか」

妊娠中の妻に対する言動として、信じられないものですが、法的にはどのように考えられるのでしょうか。理崎智英弁護士に聞きました。

●慰謝料請求は可能?

——中絶した場合、肉体的、精神的苦痛に対する慰謝料を請求できるのでしょうか。その場合、どのくらいの金額となりますか

夫から中絶を強制された場合には、精神的苦痛に対する慰謝料を請求できます。

ただし、夫から中絶を要請されたとしても、それに応じるか否かは妻が決めることです。夫婦間の話し合いの結果、最終的に妻の自由な意思により中絶を選択した場合には、夫に慰謝料を請求することは困難でしょう。

ただし、夫から中絶を要請されたことが直接的な離婚理由となった場合には、夫には婚姻関係破たんの原因があるとして、離婚に基づく慰謝料を請求することができます。その場合の慰謝料としては、過去の裁判例を参考にすれば、250万円〜300万円程度でしょう。

●認知や養育費はどうなる?

——出産した場合、相手に対して認知や養育費を請求することはできるのでしょうか。拒んだ場合、どのような手続きが必要でしょうか

婚姻中や離婚後300日以内に生まれた子どもは、法的に夫の嫡出子と推定されます(民法772条1項、2項)。そのため、夫は自分の子どもであることを否定できませんので、認知請求を行う必要はありません。

そして、妻が夫と離婚し、妻が子どもの親権者となり、子どもの養育監護を行う場合には、原則として、妻は夫に対して養育費を請求することができます。

なお、夫が任意に養育費を支払わない場合には、養育費の調停を起こす必要があります。

調停でもまとまらなければ、最終的には審判に移行しますので、審判において適正な養育費の金額を決めてもらうことになります。

審判が出たにもかかわらず夫がなお養育費を支払わない場合、最終的には、夫の財産(不動産、預貯金、有価証券等)や給与を差し押さえることにより回収が可能となります。

プロフィール

理崎 智英
理崎 智英(りざき ともひで)弁護士 高島総合法律事務所
一橋大学法学部卒。平成22年弁護士登録。東京弁護士会所属。弁護士登録時から離婚・男女問題の案件を数多く手掛ける。

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