「結婚前から日常的にプレッシャーを与えてくる妻との生活に限界を感じています」。弁護士ドットコムに妊娠中の妻と離婚したいという相談が寄せられました。
交際中は「いつになったら結婚してくれるの」「早く子供が欲しいからタイムリミットがある」と言われ、結婚したそうです。結婚後も妻の態度は変わらず、相談者に無理矢理に性交渉を要求して子供を授かりました。
相談者は精神疾患があり、そのことは妻にも結婚前から話していました。しかし結婚後「一緒に生活していく中で全て理解するのは難しい」と言われ、相談者はプレッシャーを感じるように。次第に、生涯をともにする覚悟が揺らぐようになりました。
思い切って離婚の意思を相談者が伝えても「お腹の子を育てるために、好き嫌いや愛せる愛せないなんて関係無い段階にある」と妻は拒否しています。これ以上の夫婦生活は精神的に難しいと考えている相談者が離婚するためにはどのような行動を取れば良いでしょうか。山本明生弁護士に聞きました。
●夫婦関係は破綻しているのか?
ーー暴力や不貞など明確な離婚原因はありませんが、妻の横暴な態度に相談者は限界を感じているようです。現在の状況は「夫婦関係が破綻している」と言えるのでしょうか。
夫婦関係が破綻している状態というのは、夫婦関係が修復困難な程に悪化している状態をいい、当事者の主観だけではなく、客観的状況も踏まえて総合的に判断されます。
本件では、夫婦の生活状況や妻がどの程度横暴な態度を取っているのか等が不明ですが、例えば、妻がいわゆるDVやモラハラを行っているというような場合には、夫婦関係が破綻していると判断されやすくなると思われます。
相手が離婚を拒否している場合には協議離婚は出来ず、裁判離婚を検討することとなります(なお、裁判をする前に調停をする必要がありますが、これも不成立であることを前提とします。)。
裁判離婚の場合には、法定の離婚事由が存在すれば離婚が可能です。
法定の離婚事由は以下の5つです。
(1)相手の不貞 (2)相手からの悪意の遺棄(3)相手の生死が3年以上不明(4)相手が強度の精神病で回復の見込みがない (5)その他婚姻を継続し難い重大な事由
そして、夫婦関係の破綻というのは(5)に該当するかという問題となります。前述のように、妻がDVやモラハラをしているということであれば、(5)に該当する可能性があるので、相談者としては裁判に備えその証拠(録音等)を集めておくべきであると思います。
他方で、DVやモラハラには至らないような場合には、現状では、離婚事由がなく離婚は認められないと判断される可能性があります。
もっとも、5年程度の別居期間がある場合には、夫婦関係の破綻があり(5)を満たすとして離婚できる場合があります。そこで、相談者としては、離婚に向けての別居を始めるということも考えられるのではないかと思います。