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婚約者に浮気された! 超高額慰謝料「3000万円」を請求したいができる?
(ふじよ / PIXTA)

婚約者に浮気された! 超高額慰謝料「3000万円」を請求したいができる?

信じていたパートナーに裏切られたので、高額な慰謝料を勝ち取りたい。そんなとき、相手が条件をのめさえすれば成立するのでしょうか。婚約者の浮気を発見した女性が、弁護士ドットコムに相談を寄せました。

女性は婚約者の男性と今年中に結婚する予定でしたが、コロナの影響で予定がのび、指輪購入や顔合わせはまだしていません。すでに家族や友達には結婚することを伝えていて、互いのことを婚約者と呼んでいました。家を買うことも決めており、戸建て住宅の内覧も予定していたそうです。

彼の浮気が発覚したことで、女性は慰謝料を要求しようと考えています。ただ、その要求額は「購入予定の家ぐらい」「3000〜5000万円」と超高額です。

女性は「超高額でも相手が払うと言ってくれたら示談成立になるか」と疑問に感じているようですが、実際に法的にはOKなのでしょうか。長瀬 佑志弁護士に聞きました。

●無効と判断される可能性が高い

——相手が支払うと言った場合、超高額の慰謝料請求は可能なのでしょうか。

婚約者が浮気をした場合、いわゆる不貞行為に対する慰謝料を請求することは可能ですが、高額な慰謝料を支払う旨の合意をしたとしても無効と判断される可能性があります。

過去の裁判例を紹介します。

まず、原告が原告の妻と不貞行為を行った被告に対し、被告が原告に対して慰謝料1000万円を支払う合意をしたとしてお金を請求した事案です。

裁判所は、不貞相手の配偶者に対する慰謝料額としても相当に高額であることなどを理由に、合意を心裡留保(真意とは異なる意思表示)に基づき無効と判断し、慰謝料300万円の限度で認めました(東京地裁平成20年6月17日判決)。

また、原告が、被告と原告の配偶者との間の不貞行為について、被告が原告に対して和解金500万円を支払う内容の和解契約が成立したとして、請求した事案もありました。

裁判所は、慰謝料500万円は、一般的な不貞慰謝料に比べて相当高額であることなどを理由に、その和解契約は公序良俗に違反し無効と判断し、原告の請求を認めませんでした(東京地裁令和3年9月16日判決)。

このような裁判例からすれば、相談例のように3000〜5000万円もの非常に高額な慰謝料を請求することは無効と判断される可能性が高いといえます。なお、不貞があったと認められる場合の婚約破棄の慰謝料は50〜200万円程度が相場とされます。

プロフィール

長瀬 佑志
長瀬 佑志(ながせ ゆうし)弁護士 弁護士法人長瀬総合法律事務所
弁護士法人「長瀬総合法律事務所」代表社員弁護士(茨城県弁護士会所属)。多数の企業の顧問に就任し、会社法関係、法人設立、労働問題、債権回収等、企業法務案件を担当するほか、交通事故、離婚問題等の個人法務を扱っている。著書『企業法務のための初動対応の実務』(共著)、『若手弁護士のための初動対応の実務』(単著)、『若手弁護士のための民事弁護 初動対応の実務』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が書いた契約実務ハンドブック』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が実践している ビジネス契約書の読み方・書き方・直し方』(共著)、『コンプライアンス実務ハンドブック』(共著)ほか

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