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ネットでの出会い、相手の「携帯番号」は必ず聞こう 弁護士がそう呼びかける理由
(shimi / PIXTA)

ネットでの出会い、相手の「携帯番号」は必ず聞こう 弁護士がそう呼びかける理由

夫婦円満な生活を送るためにも、できれば事前にトラブルの芽は摘んでおきたいものです。そこで、年間100件以上離婚・男女問題の相談を受けている中村剛弁護士による「弁護士が教える!幸せな結婚&離婚」をお届けします。

連載の第15回は「ネットで知り合ったら、携帯番号を聞いておこう」です。最近はSNSやアプリ経由で、パートナーと知り合う人も増えています。ただ、トラブルが起きた際に、唯一の連絡手段だったLINEなどをブロックされてしまい、連絡がつかないという事態も起きています。

中村弁護士は「相手方の住所までたどり着けないと、裁判を起こすことができず、最終的に泣き寝入りということになりかねない」と注意を呼びかけます。

●ネット上で知り合った人と関係を持つ際の注意点

現在、インターネット上で知り合う機会は増えてきています。SNSはもちろんのこと、マッチングアプリなどで知り合い、交際に発展することは少なくありません。一昔前と比べたら、「ネット上で知り合った人と関係を持つこと」のハードルは下がっていると感じます。

しかし、ネット上で知り合った人と何かしらのトラブルに発展することももちろんあります。

例えば、妊娠して子を産みたいと思っているが相手方が逃げ回っている、独身だと聞かされて関係を持ったら、相手が既婚者で配偶者から慰謝料請求が来た、一時的に関係を持ったが別れようとしたところ、ネットストーキングの被害に遭っている…などです。

そんなとき、ネット上で知り合った人だと、リアルの知り合いに比べ、素性がはっきりしないことが少なくありません。自宅住所もわからない、携帯電話番号もわからない、LINEでしか繋がっていない、相手の勤務先もわからない…などです。

そのような状況だと、そもそも相手方からLINEなどをブロックされたら、それ以上の連絡を取ることができず、そのまま泣き寝入りという事態にもなりかねません。そのような事態に陥らないための注意点をお伝えできればと思います。

●よく言われる「携帯電話番号を聞いておけ」とは?

このような問題の際に、よく「携帯電話番号を聞いておけ」と言われることがあります。これはどういうことなのでしょうか。

妊娠して相手の男性に認知請求する場合でも、不貞慰謝料請求に巻き込まれて独身だと偽った相手に何かしらの請求をする場合でも、ネットストーキングをやめさせる場合でも、最終的に必要なのは裁判になります。その際に必要になるのが、基本的に自宅住所になります。弁護士から通知書などを送る際にも、自宅住所などがわからないと通知書すら送れないという事態に陥りかねません。

そして、携帯電話番号がわかれば、弁護士会や裁判所などを通じて携帯電話会社に問い合わせることができるのです。すなわち、携帯電話会社は、携帯電話の利用契約を通じて、携帯電話の名義人の住所を把握しているので、携帯電話会社に問い合わせることによって相手方の住所が判明する可能性があるのです。

これに対し、LINEなどのメッセージアプリだけしかわからない場合、アプリの運営会社が必ずしもアカウントの本人の住所まで把握しているとは限らないので、相手方の住所までたどり着けないことが多々あるのです。

また、弁護士会や裁判所を通じた照会であっても、強制力が必ずしもあるわけではないので、運営会社から回答拒否をされるケースもあります。なお、照会では携帯電話会社よりもメッセージアプリの運営会社の方が回答拒否してくることが多いです。

相手方の住所までたどり着けないと、裁判を起こすことができず、最終的に泣き寝入りということになりかねません。

●その他に住所を知る方法は?

では、携帯電話番号以外で、住所を知る手段は出来ないのでしょうか。私の過去の経験では、住所をはっきりと聞かされていなくても、自宅に行ったり、自宅近辺まで行って自宅の場所を教えてもらったりすることがあります。

その場合、グーグルマップのストリートビューなどを使って、実際に自分が見た家について確認していただくという方法もあり得ます。ストリートビューなどを使えば、現地に行かなくとも、グーグルマップ上で住所がわかるので、それを使って住所を割り出すということもあります。

また、その他には、どこか定期的に行く場所(例えば、勤務先や、よく行く決まったお店など)がわかるのであれば、その日の帰りに自分で尾行するか、探偵などを雇って尾行してもらい、自宅を割り出すということも考えられます。

さらに、少し変わったケースでいえば、実家を知っていれば現在の住所までたどり着ける可能性があります。

これは、インターネット上で知り合ったケースというよりも、地元の知り合いで実家はわかるけれども現在どこに住んでいるかわからないなどのケースですが、自宅住所については、過去に住んでいたことがある場所一箇所がわかれば、住民票を辿ることにより、現在住んでいる場所を割り出せる可能性があります(ただし、住民票がきちんと異動されていることが必要になります)。

そのため、現在住んでいる場所が必ずしもわからなくても、過去に住んでいた場所がわかるのであれば、そこから辿れる可能性はあります。

●それでも住所がわからない場合は?

それでも住所がわからない場合は、どうすればよいのでしょうか。裁判所や弁護士からの通知を送る他の方法として、勤務先に送るということがあります。

自宅の住所がわかるにもかかわらず、必要性もなく勤務先に送付するのは名誉毀損などのリスクがありますが、最終手段としては勤務先に送付するという手段もあります。

そのため、ネット上で知り合った人から自宅住所を教えてもらえない、あるいは自宅住所を聞くのがはばかられるという場合は、勤務先を教えてもらうのもひとつの手段です。できれば、どの会社に勤めている、というだけでなく、どの支店(オフィス)に勤めている、というところまで確認しておくとよりベターです。

●泣き寝入りしないためにもきちんと相手の情報の把握を!

インターネット上で知り合った素性もはっきりしない相手と関係を持つ場合は、何かトラブルがあったときに逃げられてしまうリスクがあります。その際に、泣き寝入りしないためにも、相手の情報を少しでも入手しておくようにしましょう。

また、仮にそのような情報も教えてくれない相手は、あなたのことを大切にしているということはなく、トラブルになった際に逃げる気があるとも思われますから、そもそも関係を持たないようにしましょう。

(中村剛弁護士の連載コラム「弁護士が教える!幸せな結婚&離婚」。この連載では、結婚を控えている人や離婚を考えている人に、揉めないための対策や知っておいて損はない知識をお届けします。)

プロフィール

中村 剛
中村 剛(なかむら たけし)弁護士 中村総合法律事務所
立教大学卒、慶應義塾大学法科大学院修了。テレビ番組の選曲・効果の仕事を経て、弁護士へ。「クライアントに勇気を与える事務所」を事務所理念とする。依頼者にとことん向き合い、納得のいく解決を目指して日々奮闘中。

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