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「不倫相手に振られたからやり直したい」と戻ってきた夫 自宅立ち入り禁止にしてもいい?
(Luce / PIXTA)

「不倫相手に振られたからやり直したい」と戻ってきた夫 自宅立ち入り禁止にしてもいい?

「不倫して家を出ていった夫が、『不倫相手に振られたからやり直したい』と言ってきたのですが、別居を継続することはダメなのでしょうか」という相談が弁護士ドットコムに寄せられました。

相談者によれば、「夫は不貞をし、離婚する!と言って出て行きましたが、不倫相手にふられたのが理由で、戻りたいと言っています」。出て行く前には壁に穴を開けたりものを壊すというような暴力もあり、警察から「2人だけで会わないように」とも助言されているとのことで、「夫が一方的に戻ってくるかもしれないので、カギも交換したい」と考えているそうです。

住まいは、共同名義でお互いに住宅ローンの残債がある状態です。夫が不貞を理由に出ていった時点で別居が開始したなどの理由で、夫が帰ってくるのを拒むことはできるのでしょうか。川見未華弁護士に聞きました。

●「離婚する!」婚姻関係破綻に向けた別居開始と言える?

ーー最初に、不貞が理由で「離婚する!」と家を出ていった時点で、別居が開始したとは言えないのでしょうか?

夫が「離婚する!」と言って家を出たのであれば、妻との同居生活を終了させる意思表示があったということができます。しかも、家を出る理由も、仕事上の理由などではなく、不倫相手がいるというものです

こうした事情に照らせば、夫が家を出て行った時点で、婚姻破綻に向けた別居が開始したといえるでしょう。

●夫を追い出したまま、相談者は家に住み続けられるのか?

ーー夫が帰ってくることを拒み、相談者が家に残る形で別居を継続することはできるのでしょうか

自宅は、夫と妻の共有名義とのことですが、夫が出ていった後も、妻が住み続ける権利があります。これまで、夫婦共同生活の場であった居宅ですから、離婚が成立しない限り、妻が夫に使用料を支払う必要もありません。   夫が自宅に戻りたいと言っているようですが、妻に、夫の帰宅要求(再同居請求)を拒む正当事由があるかどうかが問題となります。

例えば、別居から数年が経過し、すでに新しい生活環境が確立しているといえる状況になっているのであれば、妻の“現状の生活環境を維持したい”という意思は尊重されるべきです。

不貞相手がいるから別居をし、不貞相手に振られたから自宅に戻るという夫の主張の身勝手さや、夫には同居中に壁に穴をあけるなど暴力的な面もあったことなどの事情も合わせて考えれば、妻には、夫の帰宅要求を拒む正当事由があるといえるでしょう。

この場合は、妻の判断でカギを交換しても、特に問題ないでしょう。

ーー逆に問題があるケースとはどのような場合でしょうか

対して、例えば、夫の再同居請求が、別居から1週間後になされたものである場合は、未だ自宅は夫の生活拠点とも言いうる状況ですので、夫の帰宅要求を拒む正当事由があるかどうか、慎重な判断が必要です。

正当事由が認められない場合に、妻が一方的にカギ交換をしてしまうと、妻が夫を締め出した(別居のきっかけを作った)という認定につながり、将来の離婚紛争で妻に不利な事情となる可能性があります。

もっとも、同居中の夫に暴力行為があり、現在さらなる暴力行為のおそれがあるような場合には、保護命令(接近禁止命令等)の対象になる可能性もありますので、弁護士に相談してみてください。

プロフィール

川見 未華
川見 未華(かわみ みはる)弁護士 樫の木総合法律事務所
東京弁護士会所属。家事事件(離婚、DV案件、親子問題、相続等)及び医療過誤事件を業務の柱としながら、より広い分野の実務経験を重ねるとともに、夫婦同氏制度の問題や福島原発問題等、社会問題に関する弁護団にも積極的に取り組んでいます。

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