手切れ金を払わないなら、不倫の事実を妻にバラす——。元不倫相手にそんな交渉を持ちかけられた男性が、弁護士ドットコムに相談を寄せました。
男性の元不倫相手は、別れに納得しなかったためか「慰謝料を請求される覚悟で(相談者の)妻に不倫をバラそうと考えていました。しかし、より穏便に解決したいと思い、100万円の手切れ金を請求することにした」と告げてきました。
手切金を支払った場合は、「今後一切関わらないこと」「妻にバラさないこと」という内容の和解書を作成するというのが条件でした。
男性は不倫相手の行為が脅迫に当たるのではないか、と思いつつも、妻に不倫をバラされるくらいであれば支払うことも覚悟しています。
果たして男性は元不倫相手に対して、どう対応すべきなのでしょうか。近藤美香弁護士に聞きました。
●恐喝罪には当たらなさそう
——そもそも、不倫相手の行為は法的に問題ないのでしょうか
この不倫相手は相談者に対して金銭の支払を要求していますので、脅迫罪というよりは恐喝罪(あるいは恐喝未遂罪)に該当する可能性があるかを検討したいと思います。
恐喝罪とは、暴行や脅迫を手段として人を怖がらせ、財物を交付させ、または財産上不法の利益を得る(他人に得させる)犯罪です(刑法249条)。
ただ、微妙ではありますが、今回の場合は該当しないと思います。
——どうして該当しないのですか
なぜなら、不倫相手の言い方は、金銭の交付を目的として脅しているというよりも、自分の気持ちの整理も兼ねて和解案を提案していると言い得るからです。
もし、不倫相手の言い方が「不倫の事実をあなたの妻にばらして家族をめちゃくちゃにされたくなければ、3日以内に100万円を払いなさい」というような言い回しであれば、金銭の交付を目的として脅迫していると考えられるので、恐喝罪(あるいは恐喝未遂罪)に該当する可能性が高いと思います。
——では、男性はどのように対処すべきなのでしょうか
率直に申し上げて、正解というのはないと思います。
不倫相手の言動が恐喝罪に該当すると考えられる場合は、その旨を不倫相手に告げるなどして、支払いを拒否したり、警察に相談したりするのも一つの手段かもしれません。しかし、その場合は、不倫相手が妻に不倫の事実を伝えてしまう可能性があります。
なお、不倫相手が、男性の妻に不倫の事実をばらしたとしても、その行為が法律に触れるとは言えない場合が多いと思われます。
したがって、男性がどうしても妻に知られたくない場合は、不倫相手にお金を支払うしかないのかもしれません。あるいは、減額の交渉を試みるのもひとつかと思います。