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「シングルマザーになる!」決意したあなたが知っておきたい「胎児認知」という方法
画像はイメージです(よっちゃん必撮仕事人 / PIXTA)

「シングルマザーになる!」決意したあなたが知っておきたい「胎児認知」という方法

未婚で出産することを決めたけれど、お腹の子を彼に認知してほしい。弁護士ドットコムの法律相談コーナーには、そんな女性から時おり、相談が寄せられています。

「未婚で妊娠しました。100%彼氏との子供です。しかし、結婚はできないと言われました。せめて任意認知してほしいとお願いしたいのですが、連絡がとれなくなってしまいました。彼氏のご両親も無視する始末です。少しでも落ち着いた妊娠生活を送りたいので、胎児認知を望んでいます」

「アメリカ人の彼との赤ちゃんを妊娠しています。ころころ考えを変える人で責任を取ると言ってみたり俺の子どもじゃないと言ってみたり。今は、逃げていて私の連絡を無視しています。胎児認知をしてもらいたくて、話し合いを持ちたいのですが、連絡すら取れません」

そもそも、「胎児認知」という言葉をあまり聞き慣れない人もいるかもしれません。「胎児認知」をすることで、どんなメリットがあるのでしょうか?手続きはどうすればいいのでしょう?河原崎弘弁護士の解説をお届けします。

●胎児の段階で父親に認知してもらえば、胎児の父子関係が確定

結婚していない父母から生まれた子と父の関係は、認知によって確定します。胎児についても、同様です。人が権利を取得する能力(人格、法的地位)は、出生後になります(民法3条1項)。したがって、胎児には、原則として権利能力はありません。

しかし、「胎児認知」をすることで、父親が亡くなった場合でも、胎児の父子関係は、確定します。相続に関して、胎児は生まれたものとみなされ、認知してあれば、胎児は相続人となり、遺産を相続します(民法886条)。

しかし、死んで生まれた場合は、胎児は相続人となれません。死産であった場合には、この胎児に相続させる旨の遺言は無効です(民法886条2項)。

認知した子供が生まれた後に、死亡した場合は(子供が短い期間でも生きていた場合)、その子供の法定相続人がその遺産を相続します。 損害賠償請求権に関しても、胎児は既に生まれた者として扱われ、損害賠償請求権を取得します(民法721条)。

例外的に、胎児が法的地位を認められるには、父親と胎児の父子関係が法的に確定している必要があります。母親としては、胎児の段階で父親に認知してもらえば、胎児の権利能力が確定し、安心です。

それには、胎児につき、父親が認知届けをするか、あるいは、遺言で認知をします(民法781条)。胎児の認知には、母親の承諾が必要です。

なお胎児認知の方法は、出生後の認知と変わりありません。妊娠中に「認知届」を母親の本籍地に出すだけです。子どもの名前は「胎児」と記入することになります。また「胎児認知」をすることで、出生届に父親の名前を記入することができます。

もしも父親が認知しない場合には、胎児の母親から、父親に対する認知を求める調停申立ができます。 胎児から、父親に提起して認知されること(「強制認知」)はできません。「強制認知」は、胎児が生まれてから、可能です。

強制力はありませんが、相手(父親)が海外に行く計画があるなら、相手が国内にいる間に、家庭裁判所に対し、認知を求めて調停申立をしておくと良いでしょう。 アメリカ人の父親に胎児認知を求める場合も、同様です。

(弁護士ドットコムライフ)

プロフィール

河原崎 弘
河原崎 弘(かわらざき ひろし)弁護士 河原崎法律事務所
昭和48年、弁護士登録。平成16年~平成22年、都内の法科大学院教授。現在は「第二東京弁護士会」(苦情相談委員、紛議調停委員)、渋谷区法律相談委員。著書・監修に「ストーカー撃退マニュアル」「離婚の法律相談」「会社書式大全」「相続の諸手続きと届出のすべてがわかる本」「遺族のための葬儀法要相続供養がわかる本」

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