記録的な大雪に見舞われた2月中旬の関東・東北地方。あいにく、この時期に結婚式や披露宴を予定していたカップルも少なからずいたようだ。
ツイッター上では、「雪のために、結婚式は延期になりました」と報告するコメントがみられた。予定通りに挙式したカップルもいたようだが、雪の影響で交通機関は大混乱。かろうじて式は行われたものの、来賓や式場のスタッフが会場にたどり着けなかったというケースもあったようだ。
もし仮に、大雪の影響で結婚式場のスタッフに欠員が出たり、引き出物が届かないなどのトラブルがあった場合、式場に対して費用の減額を求めることはできるのだろうか。田村ゆかり弁護士に聞いた。
●式場にはさまざまな義務が課せられている
「こうしたケースでは、結婚式場側と新郎新婦との間に、どんな契約が結ばれていたかをみる必要があります」
このように田村弁護士は切り出した。つまり、契約の内容が問題になるということだ。
「一般的なケースで考えると、式場側が、何月何日の何時から何時まで式場を使用させることや、何人分の料理を提供すること、衣装を貸すこと、引き出物を用意することなど、複数の履行すべき債務(義務)を負い、それに対して、新郎新婦が対価(料金)を支払う債務を負う、という契約が成立していると考えられます」
そうした契約があったとすれば、どうなるのだろうか?
「大雪によって、たとえば、引き出物が会場に届かなかったとすれば、式場側が負っている債務の一部が履行できないことになります。
民法では、『履行の全部または一部が不能となったときは、債権者は、契約の解除をすることができる』(543条本文)と定められています。そこで、式場側が履行できなかった点について、部分的に契約を解除することが認められるケースもあるでしょう。
その場合、新郎新婦が負っている引き出物の代金支払債務は、契約の解除により、さかのぼって発生しないことになります。つまりは、代金減額と同じこととなります」
●大雪に見舞われたのは式場の責任ではない
そうすると、今回のようなケースでは、新郎新婦側は、お金を返してもらえると考えて良いのだろうか?
「必ずしも、そうとは言えません。民法543条にはただし書きがあり、そこには『その債務の不履行が債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない』と書かれています。
記録的な大雪によって生じた想定外の事態は、式場側の責任ではありません。そのため、債務不履行による契約解除はできず、新郎新婦としては、届かなかった引き出物代金も含めて支払う義務がある、と言えます。
また、通常であれば、こうした免責事由は、式場側と新郎新婦との間の契約書に盛り込まれているはずです。
よって、大雪で予定通りの結婚式ができなくなった場合、新郎新婦が必ず契約を解除できる、または、必ず代金減額を請求できる、とは言えないのです」
すると、大雪が降ったような場合には、「ぜんぶ雪のせいだ」で済ますしかないのだろうか。
「結局は、ケースバイケースだということですね。ただ、式場側も、大事な結婚式が予定通り行えなかったことはわかっています。本来行われる予定だったもののうち何ができなかったのか、その対価はいくらになるのかを確認のうえ、代金減額の話し合いを式場側に申し入れるのがいいのではないでしょうか」
田村弁護士はこのようにアドバイスを送っていた。