永遠の愛を誓った夫婦が、どうして離婚を選択するのか。その理由は当事者にしか分からないことも多いですが、その過程を一方的にSNSで公開してしまうツワモノもいるようです。
弁護士ドットコムには「妻が離婚についての様々をSNSで発信して困っています」という相談が寄せられていました。
相談者の男性によると、話し合いの末に離婚することが決まりました。その後、妻はSNSで離婚を報告。男性が過去にも離婚歴があることを公表し、「私は悪くないのに。笑っちゃったわww」とバカにするような発言を繰り返しています。
男性は今回の離婚について一切口外しておらず、「言いたいことは山ほどありますが、選んだ相手が悪かったということにして自分の中で堪えています」と妻の行動に疑問を抱いているようです。
果たしてこの妻の言動、名誉毀損に当たる可能性はあるのでしょうか。櫻町直樹弁護士に聞きました。
●離婚歴の公表だけでは名誉毀損は認められない
——妻の言動に法的問題はありますか
私生活上の出来事(あるいは、私生活上の出来事であると受け止められるような事柄)で、一般人の感覚で考えれば他人に知られたくないこと(実際、いまだ知られていないこと)を、不特定または多数に向けて発信した場合、「プライバシー侵害」として損害賠償責任を負う可能性があります。
——今回、妻は男性が過去にも離婚歴があることを公表したそうです
上で述べたように、「離婚(歴)」の公表はプライバシー侵害にあたると考えられますが、これが名誉毀損にもあたるかについて、例えば、以下のように判断した裁判例があります。
「被告が主張するような離婚を積極的に評価する風潮があるとまで認めることはできないが、離婚という事実が直ちに人の社会的評価の低下を招くともいえないのであって、原告Aが離婚を決意し、原告らの離婚の可能性が高いとの事実が摘示されたからといって、それにより原告らに対する社会的評価が低下するものとは認められない。したがって、第1記事は、原告Aと原告Bの名誉を棄損するものとはいえない」(東京地裁平成15年8月27日判決)
この裁判例に照らせば、「離婚(歴)」を公表しただけでは、名誉毀損にあたると判断される可能性は低いといえるでしょう。ただ、「配偶者のDVや不倫が原因で離婚した」などの表現であれば、名誉毀損が成立すると判断される可能性が出てきます。
●まずは警告文書を送る
——男性は何か法的なアクションを取れるのでしょうか
元妻によるプライバシー侵害に対し、男性は、元妻を相手としてプライバシー侵害に基づき損害賠償請求をすることが考えられます。
また、元妻が発信した内容がSNS上に残っている場合は、削除を求めることも考えられます。
まずは、元妻に対して、SNSで離婚を公表することはプライバシーを侵害する行為であるということで、損害賠償や削除を求める文書あるいはメッセージを送る、というところから始めることになるでしょう。