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「詐欺師」に恋した人妻の末路…毎月貢がれた「10万円」は他人のカネだった
写真はイメージです(Fast&Slow / PIXTA)

「詐欺師」に恋した人妻の末路…毎月貢がれた「10万円」は他人のカネだった

交際していた男性が詐欺師でしたーー。弁護士ドットコムにこのような相談が寄せられている。

相談者は夫がいる既婚者。つまり、男性とは「不倫関係」にあった。交際中は男性から毎月10万円をもらっていたという。

男性が「詐欺師」だと知ったのは、彼と別れた後だった。男性に多額のお金を貸したまま返してもらえていない人がいることも分かった。相談者は男性に別れを切り出した際に「旦那にバラす。バラされたくなければ金を払え」などと言われ、男性に15万円ほど支払った。

これまで相談者が男性から貰ったお金は50万円をこえる。しかし、そのお金は誰かが騙し取られたり、貸したのに返してもらえなかったりしたお金かもしれない。そう思った相談者は、もらったお金を返すべきか悩んでいるという。

はたして、相談者は男性からもらったお金を返さなければいけないのだろうか。小田紗織弁護士に聞いた。

●逮捕されたり起訴されたりする可能性は極めて低い

——相談者は男性からもらったお金を返す義務はあるのでしょうか。

男性から受け取ったお金が犯罪により得られたお金だと知ったらとても不安でしょう。実は、法的には難しい解釈の問題を含む事案ですので、回答に随分悩みました。

まず、相談者ご自身が犯罪者にならないか、ですが、犯罪で得られたお金を受け取り、あるいは、保管すれば、盗品等関与罪(刑法256条1項、2項)に該当する可能性があります。

お金をもらった時点で盗品等であることを知らなかった場合は、「故意」がないため、「盗品その他財産に対する罪に当たる行為によって領得された物を無償で譲り受けた者」(刑法256条1項)には該当しません。

次に、後から知ったのにそのまま保管し続けると「前項に規定する物を…保管…した者」(刑法256条2項)に該当する可能性がありますが「委託を受けて保管」したわけではないので、やはりこれにも該当しません。

そもそも「お金」は盗品等関与罪の「物」にあたるかも諸説あるところで、近年の盗品等関与罪の裁判例をみてみると、絵画や宝石、高級品等で有罪とされているものが多いです。

いろいろ難しく説明し、不安を煽ったかもしれませんが、理屈上は犯罪に該当する可能性はあるが、実際に逮捕されたり起訴されたりする可能性は極めて低いということです。

●被害者に返金する法的義務はない

——もし被害者がいた場合、その人への返済義務はないのでしょうか。

次に、被害者にお金を返さないといけないか、ですが、昔の最高裁の裁判例で「返す必要がある」という趣旨のものがあります。

「Aが、Bから騙取又は横領した金銭により自己の債権者Cに対する債務を弁済した場合において、右弁済の受領につきCに悪意又は重大な過失があるときは、Cの右金銭の取得は、Bに対する関係においては法律上の原因を欠き、不当利得となる

結論としては、相談者の方は「悪意または重大な過失がある」とはいえないようですので、被害者に返金する法的義務はない、ということです。

ただ、被害者から責任を追及された男性が、「相談者に貢いだ」などと説明するかもしれません。そうすると被害者としては、相談者からもお金を返して欲しい、と思うでしょう。

その際に、相談者から被害者に道義的に返すのはよいかと思います。ただ、被害者が多数になり、被害額も多額になるときに、一部の被害者にだけ返したところで事態は収束しないこともあります。状況をよく見極める必要があります。

●「旦那にバラす」は恐喝罪にあたる

——「旦那にバラす」という男性の行為に法的な問題点はあるのでしょうか。

男性の行為は「旦那にバラす」と相談者の名誉を害することを告げて脅して相談者を恐怖に陥れてお金を払わせるもので、恐喝罪にあたります。今後も男性が相談者を脅迫してくることはありえます。

もし、相談者が一度目の恐喝は黙認するとしても、次に不当な要求をされるようなことがあれば、すぐに警察に相談に行くべきです。もちろん、男性との関係が明るみになることはありますが、自分の過ちにケジメを付ける覚悟をもって臨まなければならないでしょう。

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

プロフィール

小田 紗織
小田 紗織(おだ さおり)弁護士 神戸マリン綜合法律事務所
法科大学院1期生。「こんな弁護士がいてもいい」というスローガンのもと、気さくで身近な弁護士を目指し活躍中。

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