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義母が土下座して「コロナで不安だから、同居して」…妻は拒否、離婚までのステップ
写真はイメージです(Fast&Slow / PIXTA)

義母が土下座して「コロナで不安だから、同居して」…妻は拒否、離婚までのステップ

夫の両親と同居し、ストレスを感じている女性は少なくない。コロナに対する価値観の違いからイライラを感じたり、言い争いになったりすることもあるようだ。

ネット上にも、「足が痛いだけなのに『コロナかなコロナかな』といってる義母疲れる」「義母に子どもが抱きつこうとしたら『来るな!コロナがうつる』と言われた」「まったく外出自粛しない義父に腹が立つ」など、同居中の義両親に対する不満の声が上がっている。

●夫に土下座し、同居を懇願する義母

義両親と「1日でも早く別居したい」「別居できないならば離婚したい」と切望する女性たちもいる。しかし、中には夫とも別居せざるを得なくなった女性もいる。

子育て情報サイト「ママスタ」の掲示板にも、「旦那が義母と暮らすらしい」(http://mamastar.jp/bbs/comment.do?topicId=3564421)という投稿があった。

投稿者によると、義母は夫に「コロナ時勢で不安で仕方ない。お願いだから一緒に住んで」と土下座をしたという。しかし、投稿者や子どもとは一緒に住みたくないと話しているようだ。投稿者は「離婚するしかないよね」と綴っている。

このように別居することになった場合、別居期間の婚姻費用(生活費)の分担を請求できるのだろうか。また、投稿者からの申し立てにより離婚が成立する可能性はあるだろうか。

●別居に至った場合、婚姻費用を請求することは可能

離婚問題に詳しい長瀬佑志弁護士は「別居に至っている以上、婚姻費用を請求することは可能です。なお、婚姻費用には、子どもの養育費用も含まれます」とする。

では、義両親との同居に応じたくないために妻側が別居を強行した場合は、夫側に婚姻費用を請求できるのだろうか。

「夫側からは、妻側が婚姻費用の請求をすることが、権利の濫用として認められないとの反論が予想されます。

別居中の婚姻費用の権利の濫用についての裁判例(東京家審平成20・7・31家裁月61巻2号257頁、東京高決昭和58・12・16判時1102号66頁)があります。

もっとも、婚姻費用の分担請求をするには、別居に『やむを得ないとする事情』が認められる必要があります。たとえば、夫両親との同居という重要事項が結婚前には知らされておらず、止むを得ずに別居に至った場合は、婚姻費用の分担請求をしても権利の濫用といえるほどの事情はないと思われます」

●妻側から離婚請求できる?

投稿者が離婚を申し立てた場合、認められるだろうか。

「『その他婚姻を継続し難い重大な事由』(民法770条1項5号)に該当するかどうかを検討することになります。

投稿者のように、夫が妻との同居に応じなかったというだけでは、離婚が認められることは難しいかもしれません。しかし、別居期間が長期に及ぶなどの事情があれば、『その他婚姻を継続し難い重大な事由』に該当するとして、離婚が認められる可能性はあるといえます」

プロフィール

長瀬 佑志
長瀬 佑志(ながせ ゆうし)弁護士 弁護士法人長瀬総合法律事務所
弁護士法人「長瀬総合法律事務所」代表社員弁護士(茨城県弁護士会所属)。多数の企業の顧問に就任し、会社法関係、法人設立、労働問題、債権回収等、企業法務案件を担当するほか、交通事故、離婚問題等の個人法務を扱っている。著書『企業法務のための初動対応の実務』(共著)、『若手弁護士のための初動対応の実務』(単著)、『若手弁護士のための民事弁護 初動対応の実務』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が書いた契約実務ハンドブック』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が実践している ビジネス契約書の読み方・書き方・直し方』(共著)、『コンプライアンス実務ハンドブック』(共著)ほか

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