元プロ野球選手の清原和博さん(48)が覚せい剤取締法違反容疑で逮捕されたことをきっかけに、元妻でモデルの清原亜希さん(46)との関係が注目されている。週刊誌「女性自身」は、清原さんと亜希さんが離婚する際に「銭闘」があったと報じている。
同誌によると、2014年に離婚した亜希さんが心配だったのが、私立の名門校に進学した長男と次男の月々の養育費だ。清原さんから支払われることになっていたが、清原さんのあまりの金遣いの粗さに、亜希さんは、本当に支払われるか不安を感じていたという。
そこで、目をつけたのが「養育費債権」だった。亜希さんは、養育費債権を担保するために、家族が暮らしていた清原さん所有の高級マンションに長男名義で約3400万円、次男名義で約4900万円の抵当権を設定したという。マンションは2014年に売却されたが、2億円以上の売却額のうち8300万円が養育費分として確保されたそうだ。
この「養育費債権」とは、一体どのようなものなのか。須山幸一郎弁護士に聞いた。
●養育費の支払い滞りを防ぐために大切なこと
「離婚に際し、父母の一方が親権者となります。しかし、親権者とならなかった親と子どもの間の親子関係がなくなってしまうわけではありませんので、未成年の子どもを扶養する義務は、離婚後も父母が応分に負担しなければなりません。
親は、未成年の子どもに対し、自分と同程度の生活を保障する義務(生活保持義務)を負っています。婚姻中は、この義務を父母が分担していますが、離婚する場合には、子どもを引き取らない親が、子どもを引き取って養育する親に対し、生活保持義務に基づき、養育に必要な費用を支払うことになります。これが『養育費』です。
子どもは、親に対して直接、扶養義務の履行として養育費を請求することができます。ただ、通常は、子どもを引き取らないほうの親が、実際に子どもを引き取って養育する親に対して、養育費として一定の金額を支払う旨の取り決めをします」
「養育費」のことは分かったが、「養育費債権」というのは何だろう。
「養育費債権は、この『子どもが親に対して、養育費の支払いを求める権利』あるいは『子どもを引き取って養育する親が、子どもを引き取らない親に対して養育費の支払いを求める権利』のことを言います。
つまり、『養育費の支払いを求める権利』が『養育費債権』です。
養育費に関する取り決めは、単に口約束で行う場合もあれば、公正証書・調停等で行う場合もあります。しかし、残念なことに、養育費の取り決めをしたにも関わらず、支払われないケースが多いと言われています。
養育費が支払われない場合、養育費の取り決めが公正証書・調停等で行われていた場合には、養育費の支払義務を負っている親の財産(預貯金や給与等)を差押えることができます。しかし、離婚後、相手が行方不明になってしまったり、相手の財産の所在や勤務先が分からない場合は、養育費の支払いを受けるのを断念せざるを得ないことが多いのが実情です」
こういうときに「養育費債権」は重要になってくるのだろうか。
「その通りです。清原さんのケースが実際どうであったのかは、何とも言えません。ただ、養育費の支払義務を負う相手の性格や収入の状況から、子どもへの養育費が将来支払われなくなる可能性が高いと考えられる場合、また支払われなくなったときに差し押さえるべき相手の財産が期待できない場合に、相手が同意をすれば、『養育費債権』を被担保債権として、あらかじめ相手の不動産に抵当権設定をしておくことは可能です。
こうしておくと、相手が養育費の支払いを怠った場合、抵当権を実行し、競売手続を経て回収することができます。また、相手が養育費の支払い途中で、その不動産を売却したいという場合も、抵当権を抹消する交渉の過程で、通常は養育費を将来の分まで回収することが可能となります。
ただ、この方法は、未成年の子どもがいるような夫婦が離婚する場合に、常に使えるわけではありません。通常は、先の順位で住宅ローン債権者の抵当権が設定されていることが多く、また相手が同意しないことも多いので、一般的には、清原さん夫婦のような手法は取られていないのが実情です」
須山弁護士はこのように話していた。