年収は500万円位と聞いていたのに、手取りが18万円しかない――。夫が収入の額を偽り、借金を隠していたという妻の投稿が、ネット上の掲示板で話題となった。
投稿者によると、夫とはお見合いで結婚。当初、ファミレスの店長で年収は500万円ぐらいと説明を受けていたが、実際は手取りで月18万円しかもらってこないという。そのときは「暮らしていければいい」と考えて、何も言わなかったそうだ。
ところが、その後、月2万円の車のローンと、月々のカードローン5000円があることが判明。夫の貯金は全くない状態で、妻も子育てで働くことができないため、自身の結婚前の貯金を切り崩している。
2人の間には幼い娘が生まれたが、妻は「離婚しかない」と考えている。夫が、収入を偽り、借金を隠していたという事情は、離婚の理由になるのだろうか。男女トラブルに詳しい村木亨輔弁護士に聞いた。
●所得の額、借金の有無は、結婚生活を続けていく上で大切な要素
「お互いに離婚することに納得しているなら、協議離婚で済むでしょう。
どちらかが離婚することに納得していない場合には、まず、家庭裁判所に調停を申し立て、調停でも話がまとまらないなら、裁判で決着をつける必要があります」
村木弁護士はこのように説明する。もし裁判になったら、何がポイントになるだろうか。
「裁判で離婚が認められるケースとして、民法では5つの事由を挙げています(民法770条)。
1号から4号までは、いわゆる具体的離婚原因と言われるのに対し、5号『その他婚姻を継続しがたい重大な事由』は抽象的離婚原因と言われています。
暴行・虐待、過度の消費・借金・ギャンブル、長期間の別居などが挙げられます」
今回のケースは、いずれかに当てはまるだろうか。
「今回のケースでは、実際の手取額が、結婚前に聞いていた額よりもかなり低かったこと、ローンの支払をしていたことが離婚の理由にあたるのか、ということが争点になります。
奥さんが裁判で争っていく場合、1号から4号までの事由には該当しませんので、5号にあたるかどうかが問題となります。
所得の額、借金の有無は、結婚生活を続けていく上で、非常に大切な要素と言えます。
それにも関わらず、ご主人が、あえて偽りの給与額を伝えていたり、借金を意図的に隠していたような場合には、裁判で離婚を認める方向に傾くのではないでしょうか。
いずれにせよ、夫婦間で良く話し合い、その上で、今後のことを決めるのが一番ではないでしょうか」
村木弁護士はこのように指摘していた。