今若者から大人まで多くの人が利用している写真共有SNS「インスタグラム」。そんなインスタを巡って、「元不倫相手が自分との写真をいまだにインスタにあげている」という趣旨の相談が弁護士ドットコムの法律相談コーナーに寄せられています。
相談者の男性は、以前ある女性と不倫関係にありましたが、既に示談が成立しているそう。そんなとき知人から、「インスタを見ていたら、元不倫相手と(男性との)2人の写真を発見したよ」と連絡がありました。そのページを確認したところ、写真を載せているアカウントは元不倫相手でした。
直接連絡はしないと示談で約束しているため、相談者は「削除してもらうためにはどうしたらいいのか」と困り果てています。こういった場合、相談者は元不倫相手に画像の削除を求めることはできるのでしょうか。福本洋一弁護士に聞きました。
●肖像権には、公表されない利益もある
無断で撮影したものでなくても、SNS上に写真をあげると問題になりますか。
「たとえ本人の了解を得て撮影した写真であっても、本人に無断で本人の顔等の肖像を含んだ写真データをインスタグラム等にアップロードして、不特定又は多数人が閲覧可能な状態に置くことは、その本人の肖像権を侵害することになります。肖像権には、隠し撮りのように無断で撮影されないというだけではなく、その肖像を公表されない利益も含まれています」
では今回の元不倫相手の行為も、肖像権侵害にあたるのでしょうか。
「本件では『いまだにインスタにあげている』とのことですので、交際中に相手の女性に対して、インスタグラムに写真を掲載して公表することを、少なくとも黙示的には同意していたものと思われます。そのような場合には、相手の女性がそのままインスタグラムで公開を継続することは、直ちに肖像権侵害やプライバシー侵害には該当しないと思われます」
●不倫が終了していれば、過去の同意も対象外と認められる可能性がある
では「以前は許していた」となると、削除を求めることはできないのでしょうか。
「日本では、一旦個人データの取扱いに関して同意した場合でも事後的に同意を撤回して個人データの削除を求めることができる、いわゆる『忘れられる権利』は認められていません。ただ、同意した時に想定していなかった事情が生じた場合には、同意の対象の範囲外であると捉える余地はあると思われます。
本件のように、不倫交際といった一般的には他者に知られたくない事実を示す写真であり、かつ示談により既に交際関係が明確に終了しているという場合には、過去の不倫交際の事実について、新たなプライバシーの利益が生じたともいえ、当初の同意の対象の範囲外であると認められる可能性はあると思われます」
写真を削除してもらうためには、相談者は具体的に何をすれば良いでしょうか。
「相手の女性に対し、交際関係の終了後も写真の掲載を継続することまでは同意していなかったとして、インスタグラムでの自身の写真の公表を取りやめるように文書にて請求し、仮に相手の女性に応じてもらえない場合には、インスタグラムの運営会社に対して、プライバシー権(人格権)侵害を理由に送信防止措置請求(削除請求)を行うことになると思われます。
なお、女性との間での示談時の面談禁止の合意については、示談後に自らが権利侵害を受けた場合の請求行為に優先するものではないとは思われますが、相手の女性からの要望で面談禁止が合意されていたのであれば、直接ではなく代理人を通じて請求すべきでしょう」