成田空港を発着する航空機の中で、現金などが盗まれる被害が相次いでいると東京新聞(1月14日)が報じた。2018年に千葉県警が把握した被害は前年比3件増の23件だったという。うち17件は国際線の機内で発生。乗客が寝静まったところを狙われたとみられ、心配なニュースだ。
23件の被害品があった場所は、頭上の荷棚が15件、座席下が4件、座席の収納ポケットが1件、不明が3件だった。
2018年10月の事件では、香港発のジェットスター・ジャパンで成田空港に到着した千葉県の男性が、高級腕時計5点(計約280万円相当)を盗まれたことに気付いた。荷棚からバッグをおろしたところ、バッグの口がこじ開けられていた様子だったという。
機内での事件はその航空機がどこを飛んでいるかなどによって、適用される法律が異なるのだろうか。例えば領空の外に出ていた場合、盗んだ人はどの国の法律で罰せられることになるのか。小野智彦弁護士に聞いた。
●米国の領空で発生した場合、FBIが逮捕することも
ーー機内での事件は国内線と国際線、領空内か外かにより裁かれる法律は異なるでしょうか
「日本航空機内(日本に登録のある航空機内)であれば、国内線は当然ですが、国際線でも、領空内外を問わず、日本の法律が適用されることに問題ありません。刑法1条2項がこの事を規定しています。
領空外を飛行中の場合、その領空の国にも管轄権がありますので、この場合は管轄が並存することになります。日本航空機内であっても、アメリカ合衆国の領空で事件が発生した場合には、FBIに逮捕されることもあり得るのです。
国際線内の迷惑行為については、航空会社を持つ大部分の国が『航空機内で行われた犯罪その他ある種の行為に関する条約』に加盟しています。上記の原則を確認するとともに、機長に大きな権限を与えてその内容を明確化しています」
●すぐに客室乗務員に被害の届出を
ーー窃盗被害に気づいた場合、被害者はどのような対応を取るべきでしょうか
「すぐに客室乗務員に被害内容を届け出るしかありません。飛行機を降りてしまうと、被害品を取り戻すことはほぼ不可能です。反面、密閉空間である飛行機内であれば、犯人が特定されなくても、被害品が見つかる可能性があります」
ーー2018年10月の上記ケースでは結局、千葉県警が窃盗の被疑者を逮捕したものの千葉地検は不起訴処分としたそうです。機内での事件では裏付けが難しい(現場保全が困難)などの特段の事情はありますか
「頭上の荷棚から現金や財布が抜き取られるケースが多く、荷棚には複数の荷物が置かれているので、誰が出し入れしても不自然なところはなく、かつ、座席からは見えにくいということで、犯人を特定することが困難(目撃証人を得にくい)という、飛行機内特有の事情があります」