ファッション通販サイト「ZOZOTOWN」を運営するZOZO社の前澤友作社長が、自身のツイッターで「100人に100万円をプレゼントする」と宣言したことで、お祭り騒ぎが起きている。このツイートは1月7日午後5時現在、400万リツイートを超えている。
前澤社長は1月5日、ZOZOTOWNの新春セールが、史上最速で取扱高100億円を突破したことを記念して、「僕個人から100名様に100万円を現金でプレゼントします」と投稿した。応募方法は、1月7日までに、前澤社長のツイッターアカウントをフォローしたうえで、このツイートをリツイートすることだ。
当選者には、前澤さんからダイレクトメッセージが届くということだが、ネットユーザーたちの間では賛否両論が沸き起こっている。締切が差し迫っているが、そもそも、こうした「プレゼント」は法的に問題ないのだろうか。秋山直人弁護士に聞いた。
●「景表法」には違反しない
「今回のキャンペーンは『お年玉』を誘い文句にした『ZOZOTOWN』の販促キャンペーンにも見えることから、『不当景品類及び不当表示防止法』(景表法)に違反しないか、気になるところです。
しかし、景表法では、規制対象とする『景品類』について、(1)顧客を誘引するための手段として、(2)事業者が、自己の供給する商品・サービスの取引に付随して提供する、(3)物品、金銭その他の経済上の利益、と定義しています。
今回のキャンペーンでは、(1)については、このツイートの冒頭に『ZOZOTOWN新春セールが史上最速で取扱高100億円を先ほど突破!!』と記載されており、事実上、『お年玉』プレゼントの告知がZOZOTOWNの宣伝となり、顧客誘引の手段となっているとの評価は可能ではないかと思います。(3)は、当然満たしています。
しかし、(2)について、このツイートは、ZOZOTOWNの利用者に対象を限定しているわけではなく、ZOZOTOWNのサービスを一切利用しなくても、ツイッター上で、前澤氏個人をフォローし、そのツイートをリツイートするだけで『お年玉』に応募できるとされていますから、『自己の供給する商品・サービスの取引に付随して』提供されているとは評価できないでしょう。
また、前澤氏個人がポケットマネーをお年玉として配るとしているので、『事業者が』の要件も満たさないでしょう。以上から、今回のキャンペーンは、景表法には違反しないと考えます」
●「独占禁止法」にも違反しない
景表法以外の法律についてはどうだろうか。
「以前は、公正取引委員会告示によって、商品・サービスの購入や来店を条件としない、いわゆるオープン懸賞についても、『広告においてくじの方法等による経済上の利益の提供を申し出る場合の不公正な取引方法』として、1000万円を超える額の経済上の利益の提供を申し出ると、『景品類』には該当しなくても、独占禁止法上の『不公正な取引方法』に該当するとされていました。
しかし、この告示は、2006年4月に廃止されています。そのため、今回のキャンペーンは、独占禁止法に違反するともいえません。
また、もし100万円が当選したのが、暴力団員だったらどうかという疑問も生じますが、たとえば東京都の暴力団排除条例では、規制される『利益供与』は、暴力団の威力を利用することの対償としておこなわれる場合や、暴力団の活動を助長し、または暴力団の運営に資することとなることを知っておこなわれる場合に限られます。もし今回のキャンペーンで暴力団員が偶然に当選しても、条例の規制には抵触しないでしょう。
なお、当選金については、懸賞による賞金として、『一時所得』扱いとなり、(贈与税ではなく)所得税が課税されると考えます。
このように見てくると、今回のキャンペーンについて、法令に抵触する問題は特にないように思います。私もリツイートしましたので、当選を祈念しております」