東京医科大が女性と多浪の受験生の得点を不正に操作し、合格者数を抑えていた問題で、「医学部入試における女性差別対策弁護団」は10月24日、東京・霞が関の文部科学省内で会見を開いた。まず元受験生約20人を代理し、成績開示や受験料返還、慰謝料を求める「第1次集団請求」を10月29日に東京医大に対して行うと表明した。大学側の対応次第では損害賠償請求訴訟に切り替えることを検討する。
●弁護団への相談150件超
約20人は、現在も医学部入学を目指している受験生のほか、既に他大に入った元受験生、他大の医学部に通っている元受験生、既に医師になった元受験生などで、2006年〜2018年度に東京医大を受験した。
第1次請求後も元受験生らの新たな相談に対応し、必要に応じて第2次、第3次と請求をしていく方針。弁護団では8月25日に実施したホットラインで受けた相談のほか、メールや面談での相談を受け付けてきた。10月15日時点の集計で、ホットラインとメールを合わせると計154件の相談が寄せられた。
相談は、「受験料返還を求めたい」「公正に行われていれば合格していたのか知りたい」「受験のためにかかった交通費や宿泊費の補償を受けたい」などの内容が多かったという。
●「クラウドファンディング」で資金支援募る
また、弁護団ではこれまで「無償ボランティア」で今回の活動をしてきたが、活動が長期化する見込みであることから資金面での支援を「クラウドファンディング」で募ることを決定。会見であわせて概要を発表した。
クラウドファンディングは「Readyfor」(https://readyfor.jp/projects/lawyers)というサービス上で行う。目標額は250万円とし期間は10月24日〜12月28日午後11時。集まったお金は、弁護団活動への支援だけでなく、元受験生たちが東京医大に対して法的な請求をする際に役立てる方針だという。
板倉由美弁護士は「我々は私利私欲でやっているわけではないが、息の長い活動をするために経済的な基盤を作らないといけない」。元受験生の費用面での負担はなく、着手金は無償、実費も弁護団の負担だが、被害受験生が得た金額の20%は成功報酬としてもらうという。
●弁護団、他大学の「不正」も注視
なお東京医大の問題を受け、全国81の医学部医学科に対して緊急調査を実施していた文科省は10月23日、調査の中間報告を公表した。大学名は明かさなかったものの、複数の大学で性別や浪人年数によって差をつけるなど不適切な入試が行われていた疑いがあることが明らかにされた。
東京医大は同日、第三者委員会の第1次調査報告書を公表。女子や多浪の受験生への得点操作により、2017年度と2018年度で男女計69人が合格ラインに達していたのに不合格になっていたことが判明した。このうち55人が女子だった。
会見で、弁護団共同代表の打越さく良弁護士は「一人ひとりにとってはどれほどの重みか。弁護団としてもショック」。同じく共同代表の角田由紀子弁護士は「医療現場では女性は負担になるという意見が女性医師も含めてあることは承知しているが、男性医師も含めて人間らしい生活ができるような医療に改めるべきだ」と述べた。
このほか、これまでに昭和大が現役と1浪受験生、同窓生の親族を優遇していたことを公表し「深くお詫び申し上げます」と謝罪。順天堂大でも、女子が男子より不利になるような合格基準があった疑いを朝日新聞や毎日新聞などが報じている。
「今回の問題は特定の大学での特異な事件ではない」(板倉弁護士)と、弁護団では他大学での問題も注視している。