スマートフォン向けゲーム「ポケモンGO」で、ポケモンの接近を知らせる腕時計型機器「ポケモンGOプラス」を改造し、ネットオークションで販売したとして、千葉県警は7月19日、商標法違反の疑いで会社員の男性を逮捕した。
報道によると、男性は改造機器を4人に販売して、任天堂の商標権を侵害した疑いがもたれている。これまでに、1個約6000円で計350個を販売し、計約180万円の売り上げがあったという。
なぜ改造しただけで、商標権の侵害となってしまうのだろうか。岩永利彦弁護士に聞いた。
●元の商標と違ったイメージを与えることになる
「今回のような真正な商標製品の改造品(登録商標はそのまま)が商標権の侵害となるかどうかについて、民事の下級審や学説は一致しています。商標権侵害となるという結論です」
なぜそのような結論になるのか。
「下級審のうち最も古いと思われる東京地裁平成4年5月27日判決の事例を復習してみましょう。
任天堂のファミコンを改造して、『Nintendo』の商標をそのままに、新たに、「HACKER JUNIOR」の商標も付して売り出した被告を商標権侵害として民事で訴えた事例です。
被告の改造によって、元のファミコンとの同一性は失われたと認定され、商標権について以下のように判断されました。
『改造後の原告商品である被告商品に原告の本件登録商標が付されていると、改造後の商品が原告により販売されたとの誤認を生ずるおそれがあり、これによって、原告の本件登録商標の持つ出所表示機能が害されるおそれがあると認められる。さらに、改造後の商品については、原告がその品質につき責任を負うことができないところ、それにもかかわらずこれに原告の本件登録商標が付されていると、当該商標の持つ品質表示機能が害されるおそれがあるとも認められる。したがって、被告が、原告商品を改造した後も本件登録商標を付したままにして被告商品を販売する行為は、原告の本件商標権を侵害するものというべきである』」
この判断にどういう意味があるのか。
「商標というものは、その商標を付した商品等に対する信頼を裏付けするものと言えるわけです。この商標が付いているなら、こういう品質なのだろう、あの商標が付いているなら、ああいう機能があるのだろう、という感じです。
ところが、改造品に元の商標が付いたままだと、元の商標からイメージされる品質や機能と、実際の品質や機能との間でネジレが生じてしまいます。つまり、消費者としては、元の商標の会社がこのようなものを販売しているのか、認めているのか、とこのような感想等を抱くことになるわけです。
そうすると、元の商標とは違ったイメージを与えることになり、ひいては元の商標の価値を損ねることになります。したがって、商標権侵害とならざるを得ないわけです。
ですので、元の商標が付いたままの改造は、民事だけではなく、刑事でも商標権侵害となるわけです。ということは、元の商標を削除して、新たな商標のみで販売してしまえば良かった、ということも言えるかもしれません」