町を歩いていると、自転車や原付バイクに乗って犬と一緒に走っている人を見かける。犬によって必要な運動量は異なるようだが、ネットのQ&Aサイトでは「散歩で走ることが大好きで、自転車じゃないと満足してもらえない始末」といった飼い主の声もあった。
弁護士ドットコムの法律相談コーナーにも、車や人の往来の少ない早朝5時ごろ、左手にリードを持って田畑の間を原付バイクに乗って犬の散歩をしているという男性から投稿があった。
一方で、愛犬と自転車などで並走することには危険も伴う。飼い主が自転車や原付バイクに乗って、犬と並走することは道交法違反になるのだろうか。またかごに入れて移動した場合はどうなのだろうか。和氣良浩弁護士に話を聞いた。
●「道交法に違反していることは明らか」
犬と並走する行為は、法的にどう考えられるのだろうか。
「犬をリードでつないで自転車や原付バイクを運転していた場合、犬の予期しない行動によって、ハンドルが取られ、周囲の歩行者に危険を及ぼす可能性が高いといえます。したがって自転車を運転しながら、犬をリードでつないで散歩させる行為は、道路交通法(道交法)に違反していることは明らかです」
具体的には、どのような点が違法に当たるのか。
「自転車や原付バイクの運転者は、ハンドルやブレーキなどを確実に操作し、かつ、道路状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければなりません。これに違反したときは刑事罰として3月以下の懲役又は5万円以下の罰金が科せられることがあります(道交法119条1項9号)」
●「前かごに入れる」も、道交法違反に問われる可能性
では、犬を自転車の前かごに入れて移動した場合は、どうだろうか。和氣弁護士は道交法のある条文を紹介する。
「運転者は『公安委員会が道路における危険を防止し、その他交通の安全を図るため必要と認めて定めた事項』を守らなければならないと定めています(道交法第71条6号)。これに違反した場合には5万円以下の罰金が科せられることがあります(道交法120条1項9号)」
和氣弁護士によれば、この条文を受けて、各都道府県が具体的に禁止事項を規定しているという。
「例えば、兵庫県道路交通法施行細則第9条10号は『傘を差し、物を担ぎ、若しくは物を持つなど視野を妨げ、又は安定を失うおそれのある方法で、大型自動二輪車、普通自動二輪車、原動機付自転車又は自転車を運転しないこと』と規定しています。
これと同様の規定を各都道府県の公安委員会が定めており、『安定を失うおそれのある方法』で自転車や原付バイクを運転する行為は道交法違反となります。
犬をかごにそのまま入れて自転車や原付バイクを運転した場合には、犬がかごから飛び出そうとして動くなど、犬の予期せぬ行動によって自転車や原付バイクがバランスを崩す可能性が高いといえます。そのため、『安定を失うおそれのある方法』による運転として、道交法に違反する可能性があります」
ペットバッグごと前かごに載せた場合はどうでしょうか。
「その場合には、犬の動きが相当程度制限されているため、道交法違反とまではいえない可能性が高いです」
●ドッグスリングは…?
抱っこ紐のような「ドッグスリング」も、巷では人気のようだ。
「ドッグスリングで犬を抱いた状態で自転車や原付バイクを運転した場合には、犬と運転者の距離がより密になるため、犬の動きや重みが運転者に直接の影響を与えやすく、やはり『安定を失うおそれ』が高いため、道交法に違反する可能性があります。
犬の体重が重いほど、バランスを崩す可能性は高まりますが、体重の軽い小型犬であってもドッグスリングから出ようとして暴れてしまい、それにより運転者がバランスを崩す可能性がある以上、犬の重さにかかわらず道交法違反となりえるでしょう」
このように、自転車や原付バイクを運転しながら犬の散歩をしようとする行為は、周囲の歩行者だけでなく、運転者や愛犬にとっても危険な行為だ。和氣弁護士は「危険な行為ですので、しないようにしてください」と話していた。
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