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海賊版サイト「ブロッキング」緊急シンポ開催「自分の未来のこととして考えてほしい」
森亮二弁護士

海賊版サイト「ブロッキング」緊急シンポ開催「自分の未来のこととして考えてほしい」

違法アップロードされたマンガ・アニメを無料で見ることができる「海賊版サイト」をめぐって、政府が接続事業者に対して、サイト遮断(ブロッキング)を実質的に要請する決定をしたことを受けて、事業者団体やユーザー団体のメンバー、弁護士らが4月18日、東京都内で開かれた緊急シンポジウムに登壇した(主催:コンテンツ文化研究会)。

日本インターネットプロバイダー協会(JAIPA)の野口尚志理事は「賛否がわかれて当たり前のテーマだが、『通信の秘密』は事業者の権利ではなくて、国民(利用者)の権利だ。自分の未来、わが国の未来のこととして考えてほしい」と述べた。JAIPAは「ブロッキングは断じて許されない」という姿勢を示しており、今後は政策提言もしていくという。

「児童ポルノ」のブロッキングに関する議論に携わった森亮二弁護士は「どこにアクセスしようとしているかも『通信の秘密』にあたる」「違法なコンテンツに『表現の自由』はなく、それを見ようとしているユーザーにも『通信の秘密』はない。ただ、海賊版サイトを見ない一般ユーザーの『通信の秘密』を問題にしている」と説明した。

●「緊急避難の要件を満たす場合は、違法性が阻却される」という政府見解

政府は4月13日、特に悪質な海賊版サイトとして、「漫画村」「Anitube(アニチューブ)」「Miomio(ミオミオ)」を名指し。法制度の整備まで臨時的・緊急的な措置として、民間の事業者(プロバイダ)が自主的にブロッキングすることが適当とした。

ブロッキングは、「通信の秘密」をさだめた憲法21条に反するのではないかと懸念されており、さらに事業者が電気通信事業法違反に問われるおそれも指摘されている。だが、政府は「緊急避難(刑法37条)の要件を満たす場合は、違法性が阻却されると考えられる」という見解を示していた。

こうした状況を受けて、事業者団体やユーザー団体、法学者などから「ブロッキング反対」があいついだ。JAIPAは「著作権侵害への対策としてのブロッキングは、法的に許されないだけでなく、適切な議論と手続きもおこなわれていない」「ISP事業者による今後の違法・有害情報対策への取り組みに対しても悪影響を及ぼしかねない」とする声明を出した。

この日のシンポジウムを主催したコンテンツ文化研究会の杉野直也代表は、弁護士ドットコムニュースの取材に「海賊版対策はおこなっていただきたいが、ブロッキングはユーザーの『通信の秘密』の観点から問題がある。海賊版対策と『通信の秘密』が両立できるラインをさぐっていきたい」と話していた。

(弁護士ドットコムニュース)

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