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「俺たちの戦いはこれからだ!」連載漫画の強引な打ち切りや執筆放棄、法的に問題ない?
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「俺たちの戦いはこれからだ!」連載漫画の強引な打ち切りや執筆放棄、法的に問題ない?

「法律に反しないからと途中で物語を捨てる作者を罰する法律が必要だ」。漫画などの作者が事実上放棄してしまった連載作品について、こんな規制を設けるべきだという、はてな匿名ダイアリーが話題になった。

確かに、物語の途中で投げ出されてしまうと、読者としては何ともやりきれない気持ちになってしまうだろう。

ただ、一方で、このような法律ができてしまうと、俗に言う「俺たちの戦いはこれからだ!」方式で、強引に幕引きを図るケースが増えてしまう可能性がある。

そもそも、連載漫画について、読者に対してきちんと最後まで提供する義務はないのだろうか。連載を事実上放棄したり、「俺たちの戦いはこれからだ!」という形式で無理やり終わらせたりしても問題ないのか。西口竜司弁護士に聞いた。

●最後まで提供する義務を認定するのは難しい

連載漫画を最後まで読者に提供する義務はあるのか。

「最後まで読みたいという読者の気持ちもよく分かります。しかし、漫画家と読者との間には直接の契約関係があるわけではありませんので、最後まで漫画を提供する義務を認定するのは難しいですね。

もちろん、漫画家と出版社の間では契約内容によっては最後まで漫画を提供する義務が発生する場合もあり得ます」

ただ、商品である以上、読者に不完全なものを提供してもいいのか。

「連載中の漫画について、雑誌や単行本の形で売買されているのは、あくまで連載途中の数話であって、連載全体を販売しているわけではありません。読者もその数話を読むために購入しているので、商品としての欠陥を連載全体の話にまで広げるのは難しいのではないでしょうか。連載の先がどうなるかわからないのは、読者もある程度織り込み済みのことだと思います」

結局、法的な責任は生じないということか。

「そうですね。漫画家が連載を放置したり、中途半端な形で終了させてしまったとしても、読者との関係で道徳的な責任が生じるかもしれませんが、法的な責任までは発生しないでしょう。漫画というのは著作物であり,その著作物である漫画を書くか書かないかという選択は漫画家に委ねられています。

作者には表現の自由があるわけですから、今回話題になったブログのように、漫画を書かない作者を処罰するような法律を制定することが許されるものでもありません。

もちろん、愛読者の立場からすれば非常に辛い話だと思います。みんなで書いて欲しいという運動をしたら変わるかもしれませんね。でも、誹謗中傷とかすると逆効果ですから、熱い思いを伝えられるといいですね」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

西口 竜司
西口 竜司(にしぐち りゅうじ)弁護士 神戸マリン綜合法律事務所
大阪府出身。法科大学院1期生。「こんな弁護士がいてもいい」というスローガンのもと、気さくで身近な弁護士をめざし多方面で活躍中。予備校での講師活動や執筆を通じての未来の法律家の育成や一般の方にわかりやすい法律セミナー等を行っている。SASUKE2015本戦にも参戦した。弁護士YouTuberとしても活動を開始している。今年からXリーグにも復帰した。

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