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「早朝に咳き込んで起きる」生活ゴミの「野焼き」に近隣住民から怒りの声、現状は泣き寝入り
画像はイメージです(maroke / PIXTA)

「早朝に咳き込んで起きる」生活ゴミの「野焼き」に近隣住民から怒りの声、現状は泣き寝入り

野外でゴミなどを燃やす、いわゆる「野焼き」(野外焼却)。臭いが洗濯物についたり、窓を閉め切っていても臭いが部屋に入ってきたりして、住民トラブルにつながることも多くあります。

弁護士ドットコムの法律相談コーナーにも、「空き地で生活ゴミを燃やす隣の住人に迷惑している」という声が寄せられています。煙や灰の被害で数年来迷惑しており、市役所や警察にも相談したものの辞めてもらえませんでした。相談者は、「一戸建ての家なので引っ越すというわけにもいかず本当に困っています」と話しています。 

また、子育て情報サイト「ママスタ」の掲示板にも「野焼き被害者の会」と題したスレッドがあり(http://mamastar.jp/bbs/comment.do?topicId=3020232)、「早朝にスモークされて咳き込んで起きること数回」「リビングにいても目がしみる」などの被害報告が相次いでいます。

総務省の2016年度公害苦情調査によれば、2016年度に新規に受け付けた公害苦情件数は70,047件で、これを主な発生原因別に見ると、「焼却(野焼き)」が18%(12,576件)ともっとも多い割合を占めています。

こうした野焼きをすることに法的な問題はないのでしょうか。もし近隣の人が野焼きをしている場合、どう対処すればいいのでしょうか。ゴミ問題に詳しい村田 正人弁護士に聞きました。

●原則禁止だが、「例外」として認められるものも

野外でゴミなどを燃やす「野焼き」は、法的に禁止されているのでしょうか。

「野焼きは『廃棄物の処理及び清掃に関する法律』や地方公共団体の条例で禁止されていますが、焼却禁止の例外となっているものがあります。その一つに『たき火その他日常生活を営む上で、通常行われる廃棄物の焼却であって軽微なもの』があります。

庭や空き地で家庭ゴミやビニールを焼却している場合も該当するのか、現場でどのように解釈して運用するかが問題となっています」 

●行政指導だけでは解決できない場合も

野焼きによる煙や悪臭の被害に困っている住民は、どこに通報や相談をすればいいのでしょうか。

「各市区町村や都道府県には、公害苦情相談窓口が用意されています。しかし、地方公共団体は、行政指導しか行わず、その後も繰り返すようなケースでは有効な対処がなされていません。

その場合に住民がとれる措置としては、被害が広範囲にわたるときは、大気汚染の一種であるとして、公害紛争処理法に基づく公害調停の申立てをすることも考えられます。

しかし、この場合も、被害が相当の範囲にわたるものでない場合は、公害でないとして却下されるなどの限界があります。また、差止め訴訟を起こすという方法もありますが、費用と時間がかかり、現実的ではありません」

●「条例や法律を改正するべき」

そうなると現状は、行政指導にも拘束力がなく、また繰り返されたら泣き寝入りするしかない状態ですね。どうしていくべきだと考えますか。

「対応として考えられるのは、地方公共団体の条例を改正することです。煙や悪臭被害など、周辺地域の生活環境に支障が生じる野焼きは、たとえ軽微なものであっても、被害防止の観点から禁止されることを明文化し、法令上の禁止の範囲を明確にすることでしょう。

被害住民の調査請求権を規定し、行政の費用により被害調査をさせることや、改善命令を発することが出来るように条例を改正させてもよいと考えます。

昨年4月に韓国を視察した際、近隣騒音被害についての紛争を『環境紛争調整法』という法律のもと、裁判外の手続きで早期に解決していることを知りました。

我が国の公害紛争処理法を改正して『環境紛争処理法』と改名し、対象とする紛争の範囲も、近隣騒音や近隣の野焼き被害にまで広げるべきです。生活環境に生じる被害は、早期に、かつ、安価に解決するシステムを導入する時期にきていると思います」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

村田 正人
村田 正人(むらた まさと)弁護士 三重合同法律事務所
1948年、三重県津市生まれ。76年に弁護士登録(三重護士会)。2003年三重弁護士会会長。日弁連公害対策環境保全委員会委員。日本環境法律家連盟理事。ゴミ弁連会員。趣味は海外旅行。

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