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民泊オーナー「隠しカメラ」でカップル盗撮、なぜ「住居侵入罪」が成立しなかった?
画像はイメージです(bee / PIXTA)

民泊オーナー「隠しカメラ」でカップル盗撮、なぜ「住居侵入罪」が成立しなかった?

無許可で民泊を営業したうえ、隠しカメラで客を盗撮したとして、福岡市内の民泊オーナーの男性が4月上旬、旅館業法違反と軽犯罪法違反の疑いで書類送検された。

報道によると、男性は2016年8月〜2017年6月ごろ、福岡市内のマンションで、無許可で民泊を営業した疑いがある。さらに2017年6月27日〜28日ごろ、宿泊した韓国人の20代カップルを隠しカメラで盗撮した疑いも持たれている。取り調べに対して、容疑を認めているそうだ。

火災報知器型の小型カメラは、天井に取り付けられていたという。このカップルが、カメラのランプの点滅に気づいて、チェックアウトしたあとに韓国総領事館に相談したことから発覚した。

●人の住宅・風呂・トイレを「のぞき見た」場合

スーパーや勤務先などのトイレに、隠しカメラを設置したとして、検挙されるケースはよくニュースになっている。そういう場合の容疑は「建造物侵入(住居侵入)」罪であることがほとんだ。今回なぜ軽犯罪法で書類送検されたのだろうか。中島宏樹弁護士は次のように解説する。

「まず、軽犯罪法には、正当な理由なく、人の住居・お風呂・更衣室・トイレなど、人が通常、衣服を身に着けないでいるような場所(『公共の場所』でないところ)をひそかに『のぞき見た』場合、処罰される規定があります(同1条23号)。

この条文の趣旨は、プライバシーや私生活の平穏を視覚的な侵害から保護することにあるとされています。肉眼で直接『のぞき見る』以外でも、隠しカメラを利用して盗撮するなど、同じような視覚的情報が得られる行為も、同じ扱いになります。

今回のケースで、民泊オーナーは、公共の場所でない民泊が運営されている客室に設置された小型カメラを利用して、客室内をのぞき見たということで、軽犯罪法違反で書類送検されたものと思われます」

●「公共の場所」で盗撮した場合

では、「公共の場所」で盗撮した場合はどうなるのか。

「公衆トイレなど、通常、衣服の全部または一部を着けない状態でいる場所や、『公共の場所』や『公共の乗り物』で、衣類で隠されている下着または身体をカメラで盗撮して、人を著しく羞恥させたりしたり、不安を覚えさせたりした場合、各都道府県で制定されている『迷惑防止条例違反』にあたります。

たとえば、エスカレーターや電車内などで、女性のスカート内を盗撮するような行為が、これにあてはまります」

●カメラ設置のために建物に立ち入った場合

隠しカメラを設置するために、人の住居やスーパーのトイレなどに立ち入った場合はどうだろうか。

「そのような場合は、『正当な理由がないのに、人の住居・・・建造物・・・に侵入』したとして、建造物(住居)侵入罪にあたり、3年以下の懲役または10万円以下の罰金が課せられる可能性があります(刑法130条前段)。

オーナーとはいえ、正当な理由なく、民泊が運営されている部屋に勝手に入ることはできません。ただ今回のケースでは、もともと防犯目的で設置されたという経緯などから、建造物侵入罪の成立が難しいとして、軽犯罪法違反(拘留または科料)で書類送検されたものと思われます。

カメラの小型化等によって、盗撮行為が容易になりつつあるようですが、盗撮は立派な犯罪であり、許されない卑劣な行為です。そのような認識を共通にしてもらえればと思います」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

中島 宏樹
中島 宏樹(なかじま ひろき)弁護士 中島宏樹法律事務所
京都弁護士会所属。弁護士法人大江橋法律事務所、法テラス広島法律事務所、弁護士法人京阪藤和法律事務所京都事務所を経て、平成30年7月、中島宏樹法律事務所を開設。民暴・非弁取締委員会(委員長)、弁護士法23条照会審査室、日本弁護士連合会「貧困問題対策本部」委員。

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