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デマ拡散の違法性…東名死亡事故「容疑者の勤務先」虚偽情報で会社に電話殺到、休業
現在も消されていないデマツイートの例

デマ拡散の違法性…東名死亡事故「容疑者の勤務先」虚偽情報で会社に電話殺到、休業

6月に東名高速道路で夫婦が死亡した事故をめぐり、10月10日の容疑者逮捕後から、容疑者の親族や勤務先に関するデマがネット上で広まっている。勤務先とされた会社には1日で100件ほどの電話が寄せられ、影響が及んでいるという。

ネット上では、事故を引き起こしたとして逮捕された容疑者の姓や住所、職業から、ツイッターやインターネットの掲示板などで容疑者の親族や勤務先を特定する動きが加速した。朝日新聞によると、「容疑者の勤務先」や「容疑者の父」とデマを流された会社は、電話番号が拡散され、安全を確保するために休業するなどの対応を取ったという。

ツイッターで容疑者の名前を検索してみると、「25歳自分の父親が立ち上げた会社に勤務してる様」といったデマツイートが流れている。こうしたデマを呟いた人や拡散した人は罪に問われないのか。神尾尊礼弁護士に聞いた。

●電話をかけた人などは罪に問われるおそれもある

こうしたデマを呟いた人は、罪に問われないのか。

「最近フェイクニュースというのが言われるようになりましたが、内容がフェイクであるという一事をもって、ただちに違法になるわけではありません。呟いたデマの内容が、他人の名誉を毀損したり、業務に支障をきたしたりした場合などに、違法になる可能性があります」

今回のケースではどうだろうか。

「ニュースをみる限り、今回巻き込まれてしまった会社には休業等の具体的な損害が発生しているようです。業務妨害になりえますので、電話をかけた人などは罪に問われるおそれも十分にあると思われます」

●親の会社に嫌がらせをするのはお門違い

では発信者ではなく、ツイッターでリツイートして拡散した人や掲示板への転載をした人はどうだろうか。

「まず今回みなさんに考えていただきたいのは、『この情報が仮に真実であったとしても、親の会社に嫌がらせをするのはお門違いである』ということです。真実であろうがなかろうが、許される行為ではありません。

そこで、刑事的な側面からみると、業務妨害に当たりえますし、名誉棄損も(公益を図る目的などがないために)成立しえます。

民事的な側面からみても、損害賠償等の対象になりえます。転載行為について『より広範に情報を社会に広め、社会的評価をより低下させた』として、プロバイダに対する発信者情報の開示を認めた裁判例があります(東京高判平成25年9月6日)。

実際に罪に問われたり訴訟をされたりするかどうかは別にして、リツイートすることは全世界に叫ぶことと同義であり、誰かを傷付けたり法的リスクを伴ったりするおそれが常にあることを肝に銘じておく必要があります」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

神尾 尊礼
神尾 尊礼(かみお たかひろ)弁護士 東京スタートアップ法律事務所
東京大学法学部・法科大学院卒。2007年弁護士登録。埼玉弁護士会。一般民事事件、刑事事件から家事事件、企業法務まで幅広く担当。企業法務は特に医療分野と教育分野に力を入れている。

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