静岡県のアパートで5月9日、台所のコンロ付近約20平方メートルが焼ける火災が発生した。その原因が、飼い犬かもしれないと話題になっている。
報道によると、火災が発生したのは一人暮らしの女性の部屋。出火当時、女性は外出中で、部屋にいたのは飼い犬だけだった。火元は台所のコンロとみられ、点火ボタンは押された状態になっていたという。飼い犬が前足でガスコンロのボタンを長押しした結果、火が何かに燃え移った可能性があるそうだ。
「犬が火事を起こす」ことは、実際に想定されているようだ。ガス器具大手パロマは、HP上に犬のイラスト付きで、このリスクを紹介。点火ボタンのロックなどを呼びかけている。
もし外出中に、飼い犬がコンロを押して火事になってしまった場合、飼い主は罪に問われるのだろうか。森本明宏弁護士に聞いた。
●飼い主が罪に問われる可能性も…
ーー今回のような火災を人間が起こした場合、何罪になる?
不注意により火事を起こした場合の罪として失火罪があります。失火罪とは、火災前の状況などから、普通の人が払うであろう注意を払えば、火災の発生が予測できたにもかかわらず、不注意により火災を発生させてしまった場合に問われる罪です。
ーーもし犬が原因だとしたら、飼い主の責任は?
たとえば、飼い犬が大きくコンロのボタンに足をかけることが可能であり、以前にも飼い犬がコンロのボタンに足をかけたことがあるような場合であれば、部屋を無人にしている間に犬がコンロの火をつけ、火災が発生するかもしれないと予測できるでしょう。
このような場合に、コンロを移動させたり、飼い犬をケージの中に入れたりといった注意をしていなかったのであれば、火災を発生させた飼い主は失火罪にあたると考えられます。
ーー隣家などに燃え広がった場合は?
また失火罪の他に、損害賠償という民事上の責任が問われる可能性があります。ペットが他人に被害を与えた場合、通常は、飼い主は、相当な注意を払っていたと証明しない限り、その被害を賠償する責任を負います。
しかし、今回のような火災の場合には、「失火の責任に関する法律」という特別な法律の適用があり、誰でも当然に払うであろう注意すら払わなかったというような「重過失」がない限り、損害賠償の責任は負わないとされています。
単に飼い犬を残して一人で外出したというだけでは、隣家の方に対する損害賠償の責任は負わないと考えられます。一方、今まで何度か飼い犬がコンロの火をつけていたことがあったにもかかわらず、放置していたような場合には、重過失にあたり損害賠償責任を負うことになると考えられます。