保育士の不足を受けて、厚生労働省は、認可保育所のスタッフの資格を見直すことを検討している。幼稚園や小学校教諭の資格をもっている人が、保育士の代わりに働くことを、来年度から認めようというのだ。
そのような政府の動きに対して、保育士たちはどう考えているのか。保育士の転職支援サービスなどを行う株式会社ウェルクス(東京都墨田区)は12月3日、「保育士は幼稚園・小学校教諭で代替できるのか~200人の現場の声~」とするアンケート結果を公表した。
保育士を他の職種に代替するという政府案に対して、過半数が「反対」と答えるなど、現場の職員の不安が垣間見える結果となっている。
●「職種ごとに必要な知識・ノウハウは異なる」
アンケートは、2015年11月18日から11月26日にかけてインターネット上で実施された。回答者数は200人で、保育士が82.5%、幼稚園教諭が19.4%だった。
「幼稚園教諭や小学校教諭が保育士として働くことに賛成ですか?反対ですか?」という質問に対しては、「反対」が53.5%と、「賛成」(11.0%)を大幅に上回った。
「反対」と答えた人の理由(複数回答可)として最も多かったのは「各職種に必要な知識やノウハウは異なるから」で、95人がそう回答した。2番目は「保育士不足の原因は他にあると思うから」で、90人が答えた。
一方、「賛成」と答えた人の理由としては、「保育士以外のさまざまな知識を持つ人材が、保育に携わるのは良いことだと思うから」が最も多く、次いで「保育士の人材不足解消に役立つから」という回答だった。
●「保育=子守り」では保育の質が低下する
自由回答欄には、次のようなコメントが寄せられた。
「以前『保育士は子どもと遊んで昼寝すれば良いから楽だよね・・・』と言われたことがあるがそれは違う。子どもたちの命を預かっている。いろいろなお母さん、お父さんと関わっている。国は『代替』をたてるのではなく『保育士の地位向上』を確保するべき。(30代/女性)」
「人生の始まりである乳幼児期は自己肯定感を育む大切な時期。子ども一人一人の自立心の芽生えや土台を培うこの時期に、大人の都合や社会の合理化を押し付けて保育の質を下げてはならないと思う。(50代/女性)」
アンケートを実施したウェルクスの浅野幸長取締役は、弁護士ドットコムニュースの取材に対して「保育士はただの『子守り』ではなく、小学校の先生などとは異なる独自の専門性を身につけた職種です。専門性を修得していない他業種の人が参入してくることによって、『保育=子守り』というイメージが定着し、保育の質が低下する懸念があります」と話している。