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本に載った編み物をマネして制作ーー主婦が売る「ハンドメイド作品」の法的問題とは?
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本に載った編み物をマネして制作ーー主婦が売る「ハンドメイド作品」の法的問題とは?

洋服やアクセサリーなどを手作りして、インターネットで販売する「ハンドメイド作家」が、主婦などの間で注目されている。趣味を収入につなげられるうえ、育児や家事との両立もしやすいことから人気に火がついたが、中には起業につながるケースもある。

日本経済新聞によると、ハンドメイド作品の専門サイトも複数登場して、売買が活発に行われている。4つの専門サイトに掲載された作品の価格帯と出品数(400万件)から試算すると、出品総額は155億円で、首都圏近郊の百貨店の年間売上規模に並ぶという。

ただ、出品を考える人からは「どんなハンドメイド作品を売ってもOKなのか」という声もあがる。編み物やビーズアクセサリー作りが趣味の主婦・あきこさん(36歳)は、「編み物やアクセサリーは、本に掲載されている作品を参考にして、制作するケースもあります。全くのオリジナルは難しい」と語る。

本に掲載された作品とそっくりなものを作って販売した場合、著作権などの法的問題はないのだろうか。柿沼太一弁護士に聞いた。

●実用品に「著作物性」はあるのか?

「創作性が認められるデザインのものであれば、洋服や編み物などの実用品についても、著作権が発生する可能性があります。ただ、それらの実用品は絵画などと異なり、鑑賞を目的としているわけではないので、いわゆる『応用美術』というジャンルに属することになります。

このような『応用美術』に属するものについては、これまでの判例上『機能を離れて独立して鑑賞の対象となる程度の美的創作性がある場合』に限って、著作物性が認められるとされています」

なぜ「応用美術」は、「著作物」にあたりにくいのか?

「実用品の場合、デザインと機能が不可分に結びついている場合が少なくありません。非常に使いやすいペンはおそらく非常に美しい形をしているでしょうし、自動車の美しいフォルムは空気抵抗を最大限考慮した形です。

このような実用品について著作物性を認めた場合、結局その『デザイン』のみならず『機能』も独占させることになってしまいます。そのため、実用品について著作物性が認められるには、『高度な美的創作性』という高いハードルが設定されているのです。

実は、最近の知財高裁の判決(2015年4月14日・2014年(ネ)第10063号)で、異なるハードルを設定し、実用品に著作物性を認めたものがあるのですが、その流れが一般的になっているとまでは言えません。なので、やはり実用品に関しては、『高度な美的創作性』が必要と考えるべきでしょう」

ハンドメイド作家の作品については、「高度な美的創作性」があると考えられるだろうか。

「たとえば編み物であれば、通常は身につけたり、物を入れたりする実用目的のために制作されたと考えられます。すべてとは言い切れませんが、『美的鑑賞の対象となる程度の創作性がある』とはいえない物が、かなり多いと思われます。

そのような物であれば、著作物とはいえないことになり、本に掲載されている作品を、そっくりそのまま模倣したとしても、著作権侵害にはならないことが多いと思われます」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

柿沼 太一
柿沼 太一(かきぬま たいち)弁護士 STORIA法律事務所
兵庫県弁護士会所属。専門はスタートアップ(特にディープテック)法務、AI・データ関連法務、知的財産関係事務所サイトではAI、IT、知財、ベンチャー系企業に関する記事を多数掲載。

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