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駅のホームで高級靴を踏んだら「10万円を弁償しろ」 要求に応じないといけないの?
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駅のホームで高級靴を踏んだら「10万円を弁償しろ」 要求に応じないといけないの?

朝の通勤ラッシュのとき、人とぶつかったり、他人の靴を踏んでしまうことは珍しくないが、思わぬトラブルに発展することもあるようだ。「踏んでしまった相手から、この靴は10万円したから弁償するよう言われている」という投稿が、弁護士ドットコムの法律相談コーナーに寄せられた。

投稿によると、踏んだのは10万円もするミュールで、かかとを止めていた細い革のバンドが切れたという。投稿者は謝罪したものの、本心では「足や靴が踏まれるのは想定内の事故。私は泥酔していたり、歩きスマホをしていたり走っていたわけではなく、故意でもない」と考え、弁償する気はない。

ラッシュ時の駅構内は、普通に歩いていても、ぶつかったり、前の人の靴を踏んでしまう。それでも、相手がいうように弁償する義務があるのだろうか。大熊裕司弁護士に話をきいた。

●賠償義務はあるが、10万円も支払う必要はない

「通勤ラッシュ時の駅構内で、前を歩く人が履いていたミュールを踏んで、かかとの細い革のバンドを切ってしまったというケースですね。混雑していたとはいえ、踏んでしまった点において過失は認められるでしょう。ですから、不法行為に基づく損害賠償義務(民法709条)を負うことになりそうです」

では、10万円を弁償しなければならいだろうか。

「いいえ。相手の『10万円全額を弁償してほしい』という主張は通らない可能性が高いですしょう。たしかに、ミュールの購入時の価格は10万円だったのかもしれません。しかし、損害賠償として認められるのは、修理代金相当額に留まります。

仮に修理が不可能で、もう履けなくなったとしましょう。それでも、支払わなくてはならない損害額は、時価相当額です。使用済みですから、損害額は10万円に満たないことになります」

相手から「お気に入りのミュールだったから慰謝料を払え」と言われる可能性はないだろうか。

「いいえ、大丈夫です。ミュールのような『物』を壊された場合には、慰謝料請求が認められることもありません。以上を考えると、損害賠償義務を負うことになるかもしれませんが、それほど高い賠償額は認められないと思われます」

大熊弁護士はこのように話していた。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

大熊 裕司
大熊 裕司(おおくま ゆうじ)弁護士 虎ノ門法律特許事務所
第一東京弁護士会所属弁護士。家事事件、消費者問題、知的財産関係、インターネット問題(ネット上の名誉毀損、誹謗中傷対策など)を中心に扱っている。

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