自民党の特命委員会は、家族の絆の希薄化を防ぐために、配偶者の収入がいくらであっても一定の控除を受けられる「夫婦控除」を導入すべきだとする提言をまとめた。
報道によると、特命委は「若い世代に、いわゆる『事実婚』」ではなく、法律上の結婚を促す必要がある」と提言している。現在の配偶者控除は、配偶者の年間の給与収入が103万円を超えると税の軽減措置が受けられなくなるが、夫婦控除ではこの制限がなくなる。
「夫婦控除」によって、法律上の結婚が促されることになるのだろうか。どんなメリット、デメリットが考えられるのか。齋藤裕弁護士に聞いた。
●特定の価値観で、結婚している人とそうでない人を区別する制度
「法律婚が望ましいという立場に立てば、『夫婦控除』制度は、法律婚を促すというメリットはあるかもしれません。しかし、『夫婦控除』制度には、憲法との関係で問題がありうると思います」
どんな点が問題なのだろうか。
「憲法24条は、『婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立』すると定めています。
それにも関わらず、国が『夫婦控除』制度を導入し、経済的に結婚するように誘導することは、ただちに憲法違反とは言えないとしても、憲法24条の趣旨とそぐわない可能性があります」
現行の配偶者控除制度も同じような趣旨ではないのか。
「そうではありません。現行の配偶者控除制度は、経済的な負担がのしかかる一定の世帯を支援する趣旨だと考えられます。
『夫婦控除』制度はこれらとは違って、『家族の絆』等の特定の価値観に基づき、結婚している人たちとしていない人たちを区別するものです。
そのような理由による区別の合理性には疑問があります。また、日本の場合は同性婚が認められていないため、『夫婦控除制度』はLGBTの人々に対する差別に当たる可能性も否定できません。
そのため、『夫婦控除制度』は、憲法14条に反するか、少なくともその趣旨に反する可能性があると思います」