人気モデルの阿部朱梨さんがInstagramで、ダイエット広告に自分の写真を無断使用されたと訴えた投稿が話題になりました(既に削除)。
スポニチの報道によると、Instagramの運営側に肖像権侵害で報告したところ、「『情報系アカウント』だから削除はできない。当人同士で解決を」との回答だったといいます。
自分の写真を無断で使われた場合、対策はないのでしょうか? また肖像権侵害ではなく、著作権侵害に当たる可能性は? 著作権に詳しい水口瑛介弁護士に解説してもらいました。
●販売促進を狙ったならパブリシティ権侵害も
ーーインスタやツイッターなどSNS上にアップした写真を、別のアカウントが無断で使うことは違法ではないのでしょうか?
モデルの方がInstagramにアップロードしていた写真の著作権は、所属する芸能事務所やカメラマンに帰属しているものと考えられます。自撮り写真の場合には、モデルの方自身に著作権が帰属している場合もあるでしょう。
写真の著作権者は、写真を複製する権利(複製権)を専有しています(著作権法21条)。また、写真を不特定多数の公衆が閲覧できるように送信する権利(公衆送信権)も専有しています(著作権法23条1項)。そのため、第三者が著作権者の使用許諾を得ずに無断で写真を複製してアップロードする行為は、著作権法に違反する行為になります。
また、画像にトリミングなどの加工をしている場合には、著作者人格権のうち同一性保持権(著作権法20条)に違反することにもなりそうです。
報道内容からは詳細は分かりませんが、写真をダイエット商品やサービスの広告に用いた場合、モデルが当該商品またはサービスを使ってダイエットに成功したような誤解を生じさせ得るため、名誉又は声望を害する方法での利用(著作権法113条6項)に該当して著作者人格権を侵害する行為とみなされる可能性もあるでしょう。
写真の無断アップロードがダイエットに関する商品やサービスの広告として行われたものであるとすれば、パブリシティ権侵害と評価される可能性もあります。
パブリシティ権とは、肖像等が持つ顧客吸引力を排他的に利用する権利のことで、人格権に由来すると言われているものです。このモデルの方が映っている写真を使うことで商品やサービスの販売が促進される効果があり、かつ、その効果を利用する目的で投稿者が写真を利用していたとすれば、この点も違法となりうるでしょう。
●プラットフォームに通報してダメなら法的手続きへ
――自分の投稿した写真が勝手に使われているのを見つけた場合、どう対処すればいいのでしょうか?
まずはInstagramやTwitterなどのプラットフォームに権利侵害が行われていることを報告し、削除を求めることがよいでしょう。
「『情報系アカウント』だから削除はできない。」という説明の趣旨は分かりませんが、何らかの理由でプラットフォーム側が削除の対応をしてくれないこともあります。
そのような場合には、裁判所で発信者情報開示請求を行って投稿者を特定した上で、その後に投稿者に対して削除請求や損害賠償請求を行うことが考えられるでしょう。