斎藤環医師「ケツモチは比喩表現」と反論…精神科病院への名誉毀損で賠償命令、東京地裁
斎藤環さん(左)と宇都宮弁護士(2021年10月29日、弁護士ドットコム)

斎藤環医師「ケツモチは比喩表現」と反論…精神科病院への名誉毀損で賠償命令、東京地裁

精神科医で筑波大教授の斎藤環さんによるツイッターの一連の投稿が名誉毀損にあたるとして、東京都内の精神科病院が、斎藤さんに300万円の損害賠償などを求めていた裁判で、東京地裁は10月29日、斎藤さんに20万円の支払いを命じる判決を下した。

原告の精神科病院をめぐっては、ひきこもり状態にある人から「強制入院させられた」との訴えがあり、斎藤さんは同病院を批判するツイートを投稿していた。

判決をうけて、斎藤さんと代理人の宇都宮健児弁護士は、「明らかにスラップ(嫌がらせ)訴訟だ」と会見で批判した。今後の方針について、斎藤さんは「今ここで控訴するとは言いませんが、可能性は排除しません」との方針を示した。

●7投稿の内、1つのみ不法行為を認定

斎藤さんは2019年11月から2020年6月の間、この精神科病院が医療保護要件を満たさないのに、ひきこもりの人を身体拘束したなどとする複数のメディア報道を引用してツイート。精神科病院は、7つの投稿が名誉毀損にあたるとして、斎藤さんを2020年8月に提訴していた。

判決文などによれば、裁判所は、斎藤さんの「(民間団体の)拉致監禁事業に協力を惜しまなかった。(中略)ほかにも自立支援ビジネスのケツモチをしている病院名を数カ所把握しています」などとして、病院名をあげて批判した投稿1つについて「摘示された事実を真実であると認めることはできない」「原告の社会的評価を低下させるものであり、不法行為性が認められる」と判断した。

また「被告において(拉致監禁行為に協力した)との事実を真実であると信じさせる程度の合理的な資料又は根拠があったものと認めることはできる」としながらも、「ケツモチをしている」という表現については、カルテや民間団体とのメールなどから「反社会的な組織として庇護、協力等をすることにより不正な対価を得る行為に及んでいる」という事実が真実とは認められないとした。

会見に遅れてきた斎藤さんを待つ弁護団 会見に遅れてきた斎藤さんを待つ弁護団

●斎藤さん「ケツモチという言葉自体は比喩表現」

斎藤さんは判決後の記者会見で「誤解を招く言葉遣いには自戒もあるが、ケツモチという言葉自体は比喩表現です」と判決に異議をとなえた。

「SNSに書いたり、ブログで批判的に述べたりする権利は保障されるべき。節度を持った批判なら、おおいに認めるべきもの。明らかにスラップ(嫌がらせ)訴訟だが、その訴えの大半が認められなかったことは評価できる」

なお、病院は斎藤さんに謝罪文の掲載も求めたが、それは認められなかった。弁護団の林治弁護士は「ケツモチという一言で20万円は高額だ。言葉尻を捉えた不当な判決」と厳しく述べた。

宇都宮弁護士も、社会問題として扱われているひきこもり問題への「言論封殺」と警鐘を鳴らした。

「この判決が確定してまかり通ると、批判が許されなくなる。社会批判を受け付けない防波堤になるのではないかと危惧している」(宇都宮弁護士)

●どんな事件についてツイートしていたのか

今回の投稿の発端となったのは、30代の男性が「ひきこもり支援」をうたう民間施設「あけぼのばし自立研修センター」によって2018年5月に無理やり連れ去られたとする事件だ。

男性は運営元に対して、民事で損害賠償をもとめて裁判を起こすとともに、元代表らへの暴行罪、逮捕監禁致傷罪、監禁罪で刑事告訴し、警察が受理している。

このほか、施設入所中に、医療保護入院要件を満たさないのに医療保護入院と称して、精神科病院で体を拘束されたとして、男性は、この病院の医師らを逮捕監禁罪でも刑事告訴し、受理された。また、病院側に慰謝料など550万円をもとめて提訴している。

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