【新・弁護士列伝】「困っている人のために仕事をし続けたい」労働者の権利を守り、解決まで戦う 大久保修一弁護士インタビュー
大久保修一弁護士

【新・弁護士列伝】「困っている人のために仕事をし続けたい」労働者の権利を守り、解決まで戦う 大久保修一弁護士インタビュー

弁護士ドットコムニュースでは、一般の方々に弁護士をもっと身近に感じていただくために、学生による弁護士へのインタビュー企画をおこなっています。

今回お話を伺ったのは、大久保修一弁護士(旬報法律事務所)です。労働問題を専門的に手がけ、不当な解雇やハラスメント被害、残業代未払いなど、働く人が直面する数々のトラブルを解決されてきました。190センチの長身を生かし、学生時代はバスケットボールに打ち込んでいたというスポーツマンの一面も。

インタビューでは、弁護士を目指した理由や、最近寄せられる労働相談の傾向、職場でのトラブルに悩む人へのメッセージなどを伺いました。

学生時代はバスケに没頭

−弁護士を目指したきっかけや理由はなんですか?

きっかけは父親が弁護士で、事務所によく遊びに行っていたからです。困っている人のために働くことがかっこいいなと思いました。小学校の卒業アルバムにも、将来の夢は「弁護士」と書いていました。

私が高校1年生のときに父親が亡くなってしまいましたが、色々な関係者の方が葬儀に来てくださいました。父親のような色んな人に慕われるような人に近づけると良いなと思ったことも1つのきっかけです。

−学生時代はどんな生活を送っていましたか?

ひたすらバスケに打ち込んでいましたね。私が大学に入る頃にはロースクール制度が創設されていました。大学を卒業したらロースクールに入り、司法試験を受けて、弁護士になるということをイメージしていたので、学生の時はとりあえず好きなことに没頭したいなと思っていました。

−バスケはどれくらいやられていたんですか?

バスケは中学校から部活でやっていました。高校でも部活で、大学ではサークルとクラブチーム、大学卒業後も色々なチームの練習や試合に顔を出させてもらっていました。全然うまくなくて、下手の横好きです。もっともっとバスケがうまかったら、八村塁選手みたいに海外で活躍していたかもしれません。

−弁護士になられてからは、どんな一日を送っていますか?

私は労働問題を専門的に扱っています。事件の割合としては、8割くらいが労働事件。半分以上が裁判を行っています。普段は裁判に向けて依頼者と打ち合わせをして、書面を作成提出し、裁判に出頭しています。

また、会社と交渉するために手紙の文案を作成したり、関係者と電話でやりとりしたりすることも多いです。最近は電話やweb相談でやり取りをする機会も増えています。去年の4月に緊急事態宣言が出てからは、コロナ前より帰宅するのが早くなりました。

毎週ホットラインを開催 コロナ禍で医療従事者からの相談も

−先日、労働トラブルに関する無料の電話相談会を開催したと伺いました。概要を教えてください。

6月18日(金)の18時から21時にかけて、「労働問題ホットライン アフターシックス」を開催しました。

私が所属する日本労働弁護団では、毎週月曜日、火曜日、木曜日の15時から17時に、3つの電話回線でホットラインを実施しています。去年までは、固定電話でホットラインを受けていたため、回線が埋まっているときに、どれくらい電話がかかってきているのか分かっていませんでした。今年に入り、電話を転送する形にしたところ、着信履歴が残るようになり、確認すると、3時間で数百件も着信履歴がありました。3つの電話回線で対応するのは限界があるなと改めて気がつきました。

今回の「労働問題ホットライン アフターシックス」では電話回線を6つに増やしました。さらに、普段の15時〜17時ではなく18時〜21時に電話を受け付けました。日中の時間に電話することが難しい人もいますし、緊急事態宣言下で夜は20時までしか飲食店などが開いておらず、早く帰宅する方も多いと思い、深夜ではなく、18時〜21時に一番電話がかかってくるのではないかと見込んでこの時間にしました。

−以前もこのような企画は行われていたのですか?

ブラック企業被害対策弁護団という団体にも所属しているので、その団体で、弁護士になりたてのときに、深夜に働いている人向けの労働ホットラインを行いました。4〜5年前に求人詐欺が話題になったとき、求人広告と実際に入社してからの待遇が全く違った人向けのホットラインも開催しました。そのほかにも、職場を辞めたいけど辞められない人向けのホットラインなど、時期によって色々な人に向けたホットラインを開催しています。

去年もコロナの影響で困っている人のホットラインを開催しました。今年はコロナの問題に加え、ワクチンの問題が出てきています。職場によってはワクチンを半強制的に打たなければいけないが応じなければならないかという相談もあり、副作用が不安でワクチン接種をするか悩んでいる方も多いようです。

−今回のホットラインの反響はいかがでしたか?

ご相談は把握できている限りでは10件程度で、今回はあまり大きな反響とはいかなかったですね。通話時間は人によって異なりました。長い人は1時間以上お話しされていましたね。私が担当した方は自分の中で相談が整理されている方だったので、1つずつ質問に答え、10分くらいでした。

−相談される方は、相談するのが初めての方ですか?以前別の場所で相談された方ですか?

どちらもいらっしゃいます。最近は、どこかに相談してみたけれど、相談相手に専門的な知識がなく、労働弁護団やホットラインを紹介された方が多いです。初めて相談される方、相談歴がある方、どちらが多いかは日によって割合が違います。

−毎週行われているホットラインに電話をかける方は、どのような方が多いですか。

男女の構成比で見ると、以前は男性の労働人口が多かったので、相談の割合も男性の方が大きかったです。今年の1〜4月には800件相談を受け、男女比はほぼ半分でした。女性の相談が増えてきています。

幅広い年代の方から相談を受けています。特に多いのは30〜50代。大体75%を占めています。続く20代は15%、定年後再雇用の人が10%くらい、10代は2%ほどでかなり少なくなっています。

職種の雇用形態は、正社員の人が圧倒的に多く、70%を占めています。他には、パート、契約社員が10%ずつ、派遣が5%くらいです。一部、業務委託で働いている人で、実態としては労働契約にあたる人からも相談があります。

ホットラインが、労働環境について、疑問に思ったり、問題が起こったときに相談する窓口として機能している部分もあると思っています。ただ、相談者のほとんどは正社員の方で、10代、20代の相談が少ない状況にあります。ブラック企業に搾取されるリスクが高いのは、アルバイトや、入社して間もない10代、20代の方が多いはずです。コロナで解雇されやすいのもパートの方。非正規雇用の方の相談がもっとあった方が実態に近いと思っています。

本当に相談が必要な人に情報が届いているのか、相談しやすい環境になっているのかは自分たちとしても不安が残るところです。できる限り必要な人に届くよう、ホットラインやLINE相談を今後も続けていきたいと思っています。

−相談される方は、何をきっかけにホットラインを知るのでしょうか?

最近だとSNS上の宣伝を見て相談してくれる方が多いです。また、Twitterなどで自分と同じように悩んでいる人がいないか検索して、そこからホットラインの宣伝を見つけて連絡をくれる人もいるようです。自分がされていることはパワハラなのか、他の人の話を見て確かめたいんだと思います。SNSツールを通じてホットラインを知り、相談してみようかなと思う方が増えるように、こちらも発信の仕方を工夫していきたいです。

−コロナが影響している労働問題について、今後予定されている企画や展望はございますか?

私個人としては、本当に大変な思いをされている医療従事者の方の相談をもっと受けたいと思っています。医療従事者の方々が本当に安心する職場を作るためにどれだけ力になれるのかはわかりません。ただ、実際に、看護師の方から相談はありますし、まずは相談を受けて現状を知り、一緒に問題解決の方法を考えることが第一歩だと思っています。

労働問題はそれぞれ個別の会社だけの問題に収まるものではなく、立法や政府による施策が解決につながることも多いと思います。特にコロナ禍においては、医療従事者への直接的な経済的な支援や、心身の負担軽減につながる施策を求める要求や取組みも重要ですので、どういう形がありうるか、検討したいと思っています。

−医療従事者の方からはどんな相談を受けていますか?

例えば、元々普通の病棟で働いていたのにコロナ病棟を作ることになった病院の方から、「組織の編成で自分がコロナ病棟に移されそうだ。断れるのか」という相談や、「自分の部署から人が減って、業務の負担が重くなり、残業時間が増えているのに残業代が払われていない」、「難癖をつけられてクビにされてしまった」といった相談もあります。

証拠が揃っていなくても、まず相談に来てほしい

−初めて弁護士に相談する方にはどのように対応されていますか。

専門用語をなるべく使わないようにして、分かり易く説明をするように心がけています。大事なのは、説明を正しく理解してもらうことと、その説明を踏まえて、どういう出来事があったのかを教えてもらったり、今後どうするかを考えてもらうことなので。

例えば、「残業」は専門用語だと時間外労働と言いますが、「時間外労働はどのくらいでしたか?」と聞かれても、ちょっと答えにくいですよね。「何時から何時くらいまで働いていましたか?定時は何時でしたか?残業はどのくらいしていたことになりますか?」というように聞くところからはじめています。

また、「深夜労働していたか」と聞かれても何時から何時のことなのかピンと来ないですよね。この場合も、「午後10時から午前5時くらいまで働くと残業代が高くなる深夜労働と言います。この時間帯にはどれくらい働いていますか?」と聞きます。言葉は長くなるけれど、噛み砕いて説明するようにしています。

あと、相手の話すペースに合わせるように意識しています。早口だと、説明が頭に入ってこなかったり、説明を受けて疲弊してしまったりすると思うので、言葉を選んでゆっくり、一つ一つ話すように心がけています。

−相談に来るにあたって、どれくらい証拠があると解決に結びつきやすいですか?

証拠はあるに越したことはありません。ただ、証拠を揃えてから来るよりも、早く相談に来てもらう方が大事かなと思います。

早めに相談してもらえれば、どういう証拠があるのか、どうやって証拠を確保するのかも対策できます。例えば残業代が払われてないという相談を受けた場合に、真っ先に頭に思い浮かぶ証拠は、タイムカードです。自分の出退勤の記録が打刻されているタイムカードが会社にあるのであれば、携帯電話のカメラで撮影しておくことが考えられます。

タイムカードは会社の管理物なので、勝手に持ち出してはいけませんが、残業代が払われていないのであれば、自分の権利を守るために、労働時間を証明する証拠を手元にも確保しておくことが必要になります。写真は撮りやすいし、弁護士とも共有しやすい。証拠を確保する方法も今後起こるトラブルに向けた対応も一緒に考えられるので、弁護士のところにできるだけ早く相談に来てほしいです。

−最近、最も着目しているニュースはありますか?

休業補償などに関するニュースをよく見ます。働いている人や中小企業の人たちが、コロナ禍でどんなに大変な思いをしているのかのインタビューもチェックしています。

−以前の弁護士ドットコムニュースのインタビューで「コロナ被害相談村のような活動をしなくて済むくらい政府の支援も必要だと思います」とおっしゃっているのを拝見しました。労働問題において今最も政府が支援すべきだと思うのはどんな方々ですか?

とにかく困窮しているたちは増えています。所持金が全くない人や、生活保護を受けた方がいいけれど抵抗がある人もいます。生活が成り立っていない人たちには、手当の給付など、できる限り直接的な支援を早急にすべきだと思います。

−海外の労働環境や支援で着目されている国はありますか?

アメリカでバイデン大統領が就任し、連邦最低賃金を大幅に増額する大統領令に署名しました。最低賃金が日本円で1,500円相当になります。一方、現在の日本の最低賃金は、全国加重平均で900円ほどです(つい先日930円平均に上がることが決まりました。)。普段の生活にどれくらいお金を使うか考えると、1,500円くらいが最低賃金の1つのラインじゃないかと聞いたことがあります。日本も思い切って引き上げられたら良いと思います。

5年後10年後も、困っている人のために仕事を続けたい

−休日はどんな過ごし方をされていますか?

仕事で気になったことを調べたり、書面をよりわかりやすく作るにはどうすればいいか考えたりしています。凝り性なので仕事のことばかりです。合間にジムに行って運動しています。最近、子供も産まれたので、子供と遊ぶのがこれからの楽しみです。

−今後の展望を教えてください。

5年後10年後も今と同じように、困っている人のために仕事をし続けたいです。自分にとってやりがいを感じられるのは、依頼者や関係者が喜んでくれる顔を見られたときです。

困っている人のために仕事をし続けるためには、体力を維持しないといけないし、新しいことも勉強しないといけない。今やっていることを引き続き頑張りたいと思います。

−法律トラブルを抱えて、悩んでいる方へのメッセージをお願いします。

自分が抱えている問題が法律トラブルなのかわからない場合も多いと思います。困っていることがある、嫌な思いをしている、そんな時に相談できる場所として弁護士という選択肢もあると考えて欲しいです。体調が悪い時にお医者さんに行って、ただの風邪ですね、と言われたら安静にしますよね。お医者さんに行くのと同じように、解決策を知って安心するために、弁護士のところに来て欲しいです。

自分で調べて正しい答えにアクセスできれば良いと思います。とはいえ、インターネット上はいろいろな情報があるので、正しいところにアクセスするのは難しいです。一人で溜め込んで、悩んで、拗れると解決するのが大変です。早めから弁護士に相談してもらったほうが大きな問題にならないで済むと思います。

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