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2020年06月07日 10時21分

誹謗中傷してしまった人へ。違法となる判断基準、そして今からできること。

誹謗中傷してしまった人へ。違法となる判断基準、そして今からできること。
自分の書き込みを振り返った人もいるのではないでしょうか(taikichi / PIXTA)

恋愛リアリティー番組『テラスハウス』の出演者だった女子プロレスラーの木村花さんが5月23日に亡くなったことを受け、ネットの誹謗中傷に注目が集まっています。

弁護士ドットコムにも5月23日以降、誹謗中傷を書き込んだ人から「軽い気持ちでやってしまい後悔しています」「過去の自分のした事を不安に思っています」といった相談が多数寄せられています。

誹謗中傷には民事と刑事の両面で法的責任が発生する可能性があります。

甲本晃啓弁護士によると、度が過ぎると民事上は不法行為(違法)にあたり、投稿削除義務と損害賠償責任を負う可能性があります。

また、投稿の内容によりますが、社会的な評判を下げるようなものであれば「名誉毀損罪」や「侮辱罪」、仕事に支障がでれば「業務妨害罪」、強い言葉で被害者を脅せば「脅迫罪」や「強要罪」などの刑事処罰の対象となる場合があります。

どのような書き込みが誹謗中傷にあたるのか。また、誹謗中傷を書き込んでしまった人は、どうすれば良いのか。実際の相談をもとに、加害者側の民事弁護を積極的におこなっているという甲本弁護士に解説してもらいました。

●ケース1:サイトで有名人を誹謗中傷

・とあるサイトに、有名人5人について、「クズ」「ゴミ」「雑魚」「キモい」などと書き込んだ。反省して、数日後に前言撤回、謝罪や反省を述べた。

・実際に仕事が減った芸能人に対し、「オワコン」「消えたな」と書き込んだ。

ーー「クズ」「ゴミ」「雑魚」「キモい」などの発言は、違法でしょうか。

まず、ネットの誹謗中傷はどこから違法か、2つ基準を示します。

1つめは、違法かどうかの判断枠組みは「投稿した文言、文脈・投稿態様などを総合考慮して、受忍限度を越えていれば違法だ」というものです。

民主的な社会は、意見と批判で成り立っています。表現の自由との関係で、批判的な意見なども十分に尊重しなければならず、そこで「受忍限度」をこえない限りは我慢するべきだという考え方が取られています。

2つめは、どんな場合に「受忍限度」を越えた違法な投稿となるのかという判断方法です。

たとえば、嘘の事実関係を書いて人の社会的評価を下げるような投稿(例:あの人は家族で給付金を不正受給している)や、人格を否定するような発言(例:あなたは生きている価値がない。死ね)については、表現の自由で保護する必要性も低く、受忍限度を超えると判断されます。

例に挙げられた、「クズ」「ゴミ」などの言葉は人格を否定するもので、投稿で繰り返し使えば、違法であると判断されるものと思います。

ーー有名人への誹謗中傷も、法的問題になりますか

「有名人だから」は、誹謗中傷をしていい理由にはなりません。

有名人が不祥事を起こしたりした場合、人格を否定する発言が許されるような風潮があります。もちろん、有名人はその社会的な活動に伴う「有名税」として、ある程度厳しい批判を受けるのもやむを得ないでしょう。

しかし、憲法13条は「すべての国民は、個人として尊重される」としているので、有名人であろうとなかろうと、まっとうな意見や批判という域を超えて、その人の人格を否定するような言葉をぶつけることまでは許されないでしょう。

したがって、有名人だからといって何を書いても許される訳ではなく、一人の人間として、その人の人間性や生き方など人格を否定するような投稿をすれば、法的責任が生じます。

●ケース2:ゲームプレイヤーを誹謗中傷

・とあるゲームプレイヤーのゲーム内の言動が掲示板に晒されていた。途中からSNSの発言なども晒され、そのゲームプレイヤーの関連スレッドが7つほどたてられた。仕事や体型、投稿内容をバカにしたりしていたが、キャラ名やアカウント名から実名は分からない

ーーゲームで知り合った相手など、ペンネームの相手を誹謗中傷した場合、法的問題になりますか。

よくご質問を受ける問題ですが、ネット上のアカウント名についても、実名での誹謗中傷と同じく、法的責任が発生する場合も多いです。

確かに、インターネット上の人格に過ぎないので名誉毀損にあたることはないとの見解もありますが、裁判実務では、インターネット上の活動実態に応じて名誉毀損の成立を肯定する見解のほうが支配的と思われます。

私見ですが、現在では、「eスポーツ」に代表されるようにゲーム文化に対する認知と理解も進んでいます。

それなりの人数と規模が伴うオンラインゲームについては、その中でヴァーチャルな社会が成立していると考えられるので、ゲーム内での活動も法的に十分保護される必要があります。

ゲーム内での活動に支障を来すような誹謗中傷は、違法と評価される場合があるでしょう。

●ケース3:LINEで暴言を吐いてしまった

・LINEで同僚に対して「あなたの存在に嫌悪と不潔さを私は感じてしまった」と発言してしまった。

ーーLINEで誹謗中傷をした時、1対1のトークでも法的問題になりますか。また、グループLINEの場合は、どうでしょうか。

グループか個人間かで違法性の程度は異なると思います。

具体例をみると「存在に嫌悪と不潔さを感じる」という表現は、明らかに被害者の人格を否定するものですから、違法です。

民事でいえば、個人間でダイレクトに送信した場合では侮辱、グループ内での発言は名誉毀損が成立し、名誉毀損のほうが影響範囲が広く、違法性も高いです。

参考までに、違法性の程度は損害賠償に比例します。この事例では侮辱の場合で10万円以下、名誉毀損では20〜30万円が、裁判で認められる慰謝料の相場と考えられます。

●ケース4:過去に誹謗中傷をしてしまった

・匿名掲示板に、他人のSNSに投稿された画像について、「ブス」「バカじゃないのか」「ババア」などを書き込んでしまった。数年前から書き込み、最後の投稿は3か月ほど前だが、削除依頼をすることでやぶべびとなってしまうか。

・1年ほど前、芸能人のアンチをしていて、派手に悪口を書いていました。すぐにアカウントを消しましたが、不安です。1年経過しているので大丈夫ですか。

ーー過去に誹謗中傷をしてしまった場合、どう対応すれば良いのでしょうか。

削除はしておくべきですが、どの段階でも弁護士へ相談することをおすすめします。

自分で削除ができない場合にどうするべきかや、時間が経った投稿について被害者に対して謝罪をするかなどについては、ケースごとの判断になります。

不安であれば、どの段階でも弁護士に投稿内容をみてもらって、刑事処罰の可能性や損害賠償などの法的なリスクを検討してもらうのが良いでしょう。その際には、投稿内容の確認が必要ですから、削除をする前に投稿内容を必ず保存または印刷しておいてください。

よく「削除しても投稿した事実が消える訳ではないので、法的責任を追求されるのではないか」という質問があります。

論理的には確かに一定期間違法な投稿を掲載していたのですから、その責任を負う可能性は否定できません。

しかし、被害者が既に発信者情報開示請求の手続をしているような場合を除けば、削除した投稿について被害者がわざわざ法的な責任の追求に動くという事例はとても稀なケースです。

●もし裁判になったら

ーー被害者が発信者情報開示請求をした場合、発信者(加害者)にはどのように通知されるのでしょうか。

被害者が発信者情報開示請求をすると、プロバイダから、発信者(加害者)に対して、開示に同意するかどうかを意見を聞くための「意見照会書」が書留郵便などで送られてきます(プロバイダ責任制限法4条2項)。

「意見照会書」が届いたら、すぐに弁護士に見通しを聞くのが得策です。被害者は既に加害者特定のための手続を開始しているので、投稿内容が「違法」ならば、最終的には情報開示がされることは避けられません。

なお、開示された情報を悪用することは法律で禁止されているので、逆に被害者から嫌がらせを受けるようなことはほとんど見聞きしたことはありません。

いずれにしても、弁護士が違法性ある投稿だと判断した場合は、早い段階で被害者と連絡をとり早期の和解を目指すべきです。

ーー「意見照会書」をいつまで待てば、もう来ないものであると安心できるのですか。

発信者情報開示請求の手続が取られた場合、誹謗中傷の投稿から半年以内に「意見照会書」が届くことがほとんどです。

これはプロバイダの通信ログの保存されている期間が短いもので3カ月程度に限られるので、早期に手続が取られるためです。あくまでも目安ですが、投稿から半年や1年が経ったものについては、法的紛争になる可能性は低いといえます。

●投稿する際、どう気をつければいい?

ーー甲本弁護士は書き込んだ側の弁護もしているということですが、なぜ誹謗中傷はおきると思いますか。今後どう気をつけるべきでしょうか

ネット上での誹謗中傷は、被害者の具体的な言動に対する怒りや正義感から、「あいつは調子に乗っているので、叩かれて当然だ」とはじめるケースが多く見受けられます。

とりわけ有名人に対しては、「様々な批判を受ける立場にあるので、そんなことくらい気にしないだろう」という意識が働きやすく、時として、刺すような強い言葉が使われがちです。加害者ひとりひとりがそれぞれ抱く罪悪感は、驚くほど希薄であることが多いです。

特定の被害者への誹謗中傷が増えはじめると、他の加害者が投稿した誹謗中傷の内容を見て、自分の行動に共感や承認が得られたような錯覚を覚えるため、さらに罪悪感なく、何度も強い言葉を被害者に繰り返し浴びせることになります。その投稿が他の加害者の投稿をさらに増長させるという負の連鎖がおきるのです。

ネットを通じて、ヴァーチャルで被害者を殴っている場合、殴っていることの自覚もないのです。

私たちひとりひとりが加害者にならないためにどうしたらよいのか。それは、他人に対して批判的投稿をするときに、例えば、「自分の氏名・住所を明らかにしてその内容が投稿できるものか」を考えることです。

SNSには秘匿性があるように見えますが、違法な内容を投稿すれば、どのみち発信者情報開示請求によって住所・氏名等は明らかにされますから、そのように考えてみるといいでしょう。

●多くは和解で解決している

ーー過去に危ない投稿をしたという心当たりがあり、悩んでいる人に、アドバイスをお願いします。

まずは、弁護士の意見を聞くことです。私の元に相談に来る方には、法的責任を追及されるのではないかと強い不安を感じている方も少なからずいます。しかし、違法性が認められる投稿は多くても全体の2〜3割といったところです。

違法性があると判断しても、どのような対応が望ましいかは事案と程度に応じてまちまちです。すぐに和解交渉を始める必要がある事案もあれば、リスクを説明しつつ「意見照会書」が来た段階で対応すればよいと方針をとることもあります。

ひとつ確実に言えるのは、違法な誹謗中傷をしたとしても、多くの場合、被害者に適切に謝罪や損害賠償を行って、和解で解決しているということです。もちろん、被害者の被害感情が大きい場合は和解交渉に時間かかかりますが、事案に応じた相場の範囲で適切な解決が出来る問題だと思います。

不安な場合は、専門家の客観的な意見がとても有効です。私が実際に接した事例としては、不安を抱えるあまり、精神に不調を来して病気になったケースや、自責の念から自死をされてしまったケースもありました。

投稿した事実がなくならない以上、一人で抱え込んでいても解決できる問題ではないので、周囲に相談し、専門家である弁護士の意見に耳を傾けて欲しいと思います。

取材協力弁護士

甲本 晃啓弁護士
東京・日本橋兜町に事務所を構える弁護士・弁理士。東京大学大学院出身。専門は知的財産とIT法。多くの企業法律顧問を務める。個人向けサービスとしてネット名誉毀損「加害者」の弁護に特化したサイト「名誉毀損ドットコム」(http://meiyo-kison.com)を2016年7月から運営。
事務所URL:http://komoto.jp

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