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コロナで業績悪化、シフト削減に悲鳴…「休業手当」など交渉の余地あり
写真はイメージです(ocsa / PIXTA)

コロナで業績悪化、シフト削減に悲鳴…「休業手当」など交渉の余地あり

新型コロナの感染拡大により、経済にも深刻なダメージを与えています。弁護士ドットコムにも複数の労働相談が寄せられていますが、今回は「コロナの影響で業績が悪化。パートに来なくていいと言われました」という方の相談事例について考えてみます。

相談者は、これまで週2、4回、中小企業のパートとして働いてきました。ところが会社からコロナによる業績悪化を理由に「月2、3回」までシフトを削られてしまったのです。「この仕事で生計を立てているため困っております」といいます。

このような業績悪化を理由にシフトを削減されることに、法的な問題はないのでしょうか。相談者は会社に対して、どのような要求ができるのでしょうか。

労働問題に詳しい加藤寛崇弁護士によれば「大事なのは、労働条件で勤務日数(または最低勤務日数)が具体的に決まっているかどうかですが、契約書などで決まっていなくても請求できる余地はあります。休業にどこまで雇用主の責任があるかで請求できる額は異なりますが、6割の休業手当は認められやすい」といいます。

加藤弁護士に詳しく聞きました。

●「労働条件で勤務日数が具体的に決まっているかどうか」

ーーこのような場合、労働者がまず確認すべきは何でしょうか。

コロナによる業績悪化に限らず、パート・アルバイトなどシフトで働いている従業員が、一方的にシフトを減らされるという事態は起こります。

このような場合に重要なのは、一定期間の「勤務日数」または「最低勤務日数」が、労働条件として決められているか、という点です。

たとえば、「週5日勤務、日給1万円」という労働条件だった場合に、雇用主の都合で週3日勤務に減らされれば、原則として1週間につき差額の2万円を請求できます。

労働契約は、「労働の提供」とそれに対する「賃金の支払」をすることを合意した契約です。雇用主の都合で労働の提供を拒否しても、従業員は賃金の支払を求める権利を失わないからです。売買の買主が商品の受け取りを拒否しても、代金を支払う義務を負うのと同じようなものです。

●「契約書等で具体的に決まっていなくても請求できる余地はある」

ーー具体的に定められていなければ、請求は難しいのでしょうか。

雇用契約書などで、勤務日数が「シフトによる」などとしか定められていない場合、提供されるべき労働の範囲が明確でないため、対価として請求できる賃金も明確になりません。このような場合には、シフトカットされてもその分の賃金が請求できない可能性もあります。

ただ、雇用契約書などで明確に勤務日数(または最低勤務日数)が定まっていなくても、週のうち少なくとも一定日数は勤務していたという過去の実態があれば、それを最低勤務日数だと主張して、減らされた分を請求できる余地はあります。

●「少なくとも6割の休業手当は認められやすい」

ーー仕事がない、給与が支払えないなど、会社側にもやむを得ない事情がある場合はどうなりますか。

個別の事業の経営状況、資力などでも左右されるでしょう。

コロナのため事業に影響も出ているでしょうが、まだ雇用主に経営体力が十分残っているような状況であれば、シフトカットを理由とした賃金請求が認められる見込みはあります。

一方で、勤務日数(または最低勤務日数)が決まっていても、就労できないのが雇用主の責任と言えない場合もあるでしょう。そのような場合、就労できない分の賃金請求が認められないことはあり得ます。

ーーシフトカット分の賃金請求が認められない場合でも、なんの補償も受けられないのでしょうか。

その場合には、平均賃金6割の休業手当の請求(労働基準法26条)が認められる余地はあります。

法律上は「使用者の責に帰すべき事由による休業」、つまり雇用主に責任があって休業した場合に、最低6割を支払うことを雇用主に義務づけています。

ーー今回のような場合にも、休業手当はもらえますか

休業手当の請求ができる場合はかなり広く考えられています。コロナによる業績悪化であっても、休業手当の支払義務を免れることは基本的に認められないと言えます。

相談者としては、まずは、シフトカット分の差額を請求し、少なくとも6割の休業手当については支払ってもらうよう要求することが考えられます。

厚生労働省が、新型コロナウィルスの影響による経済上の理由で事業活動の縮小を余儀なくされた雇用主が従業員を休業させた場合の助成金(雇用調整助成金)の特別措置をとっています。雇用主としてはこれらの制度も利用して、従業員の生活に配慮すべきです。

プロフィール

加藤 寛崇
加藤 寛崇(かとう ひろたか)弁護士 みえ市民法律事務所
東大法学部卒。労働事件、家事事件など、多様な事件を扱う。労働事件は、労働事件専門の判例雑誌に掲載された裁判例も複数扱っている。

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