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2018年07月03日 08時36分

運転手に電話で「LINE見て」と促したらバスに追突! 通話相手が罪に問われたワケ

運転手に電話で「LINE見て」と促したらバスに追突! 通話相手が罪に問われたワケ
写真はイメージです(Yoshi / PIXTA)

「もしもし、運転中?画像送ったんだけど見てよ」。運転中、このようなやりとりをしていて事故が起きれば、通話の相手方であっても、罪に問われることがあるかもしれない。

岐阜県大垣市の名神高速道路で3月に大型トラックが観光バスに追突し、乗客ら35人が重軽傷を負った事故。運転していたトラック運転手のスマホにLINEを通じて画像を送り、見ることを促したとして、岐阜県警が5月19日に自動車運転処罰法違反(過失傷害)のほう助容疑で、運転手の同僚である群馬県桐生市の男性を書類送検したことが報じられた。

中日新聞の報道によると、送った画像は私的なもので、事故の約20分前から通話していた。男性は容疑を認め、「運転中でも確認してくれると思った」と話しているという。今回のケースはどのような教訓になるか。運転手に画像を送ったり電話をかけたりする行為の問題点も含め、交通問題に詳しい平岡将人弁護士に聞いた。

●走行中と知りながら画像見るよう促した

ーー本件の運転手の行為についてどのように考えますか

「運転手が走行中に、手で保持しなければ送受信できないような電話を使用したり、スマートフォンの画像を注視したりすることは道路交通法71条の5第5項で禁じられており、10万円以下の罰金(道交法119条の3、120条1項11号)に処される可能性があります。

手がふさがるような形で電話をしたり、画面を注視したりするだけでもこのような罰則規定があります。これらの行為は、前方不注意の原因となるものであるので、事故防止の観点から規定されています。

さらに、これらの不注意な行為が原因で事故が起こり、今回のように負傷者が生じれば、過失運転致傷罪が成立します(自動車運転処罰法5条)。この場合、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金の可能性があります」

ーー今回はどうして実際に運転をしていない通話相手が罪に問われたのでしょうか

「電話をかける側からすれば、相手がその時に電話に出るかは相手の自由ですし、LINEに送った画像を相手が見るタイミングも相手の自由です。電話やLINEの相手がたまたま運転中だったということで、罰せられるわけではありません。もし、このような状態だと、うかつに電話もLINEもできません。

今回の事件で重視されたのは、通話相手が、運転手が走行中であることを知りながら、あえてLINEに送った画像を見るように促した点と、何より結果として重大な事故の原因となったという点でしょう」

●重大事故を起こしたことに大きく貢献

ーー通話相手の行為が重大事故を引き起こすことを促したという評価になるのでしょうか

「刑法上、罪を犯したとして処罰されるのは、直接実行した犯人(正犯といいます)だけではありません。62条1項は、『正犯を幇助したものは、従犯とする』と規定し、従犯には正犯の刑を減刑したものが科されます。従犯には、本件のような正犯の犯罪の達成に寄与するような『ほう助犯』と、犯罪をするようにそそのかす『教唆犯』があります。

本件では、通話相手が、運転中と知りながら電話でスマートフォンの画面を見るように促しているので、そのような行為をすれば、正犯である運転手が事故を起こしかねないことは分かっていたはずです。それにもかかわらず、あえて携帯の画面を見るように促すことにより運転手の前方不注意を促進したと評価できます。

このような事情があることから、重大な事故を起こしたことに大きく貢献しているといえるので、『ほう助』となるとされたのでしょう」

ーー自動車の運転では「ほう助」というと他にどのようなケースが考えられますか

「飲酒運転の場合が考えられます。そもそも、運転者が酒気を帯びていることを知っているのに、運転者に自分を乗せるよう要求して、飲酒運転をした場合は、その行為自体が(事故にならずとも)犯罪に該当します(道交法65条3項、3年以下の懲役または50万円以下の罰金)。

そして、例えばそのような場合に死亡事故が起こってしまった場合、飲酒の程度にもよりますが、運転手には危険運転致死罪(自動車運転処罰法2条1号)が成立し、1年以上の有期懲役に処される可能性があり、積極的に運転者の飲酒運転を止めることをせず、同乗していた同乗者にも、危険運転致死罪のほう助犯が成立する可能性があります。

交通事故は少しの油断で、大きな結果が生じます。運転手だけではなく、同乗者、周りの人たちが、気を付けあって交通事故というかなしい結果が生じないように努めるべきでしょう」

(弁護士ドットコムニュース)

平岡 将人弁護士
中央大学法学部卒。全国で8事務所を展開する弁護士法人サリュの代表弁護士。主な取り扱い分野は交通事故損害賠償請求事件、保険金請求事件など。著書に「虚像のトライアングル」。実務家向けDVDとして「損保会社を動かす!交通事故被害者を救う賠償交渉ノウハウ全三巻」など。
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事務所URL:http://legalpro.jp/
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