酒気帯び運転で事故を起こした知人のため、姉が「替え玉」になりましたが、どんな罪に問われるのでしょうかーー。弁護士ドットコムの法律相談コーナーに、こんな質問が投稿されました。
投稿者によると、知人は酒気帯び運転で単独事故を起こしたそうです。知人が姉に連絡したところ、姉は知人の「替え玉」になると言い出しました。知人は一度、断ったものの、結局、姉の言葉に甘えることになりました。その後、知人は保険金100万円ほどを受け取り、全額を姉に渡したそうです。
ところが、後日、保険会社の調査が入り、姉は事故の替え玉をしたことを自白しました。結局、100万円は姉が保険会社に返金し、警察に自首することを考えたそうです。
交通事故の替え玉になり、一度は保険金も受け取った姉は、どのような罪に問われるのでしょうか。小野智彦弁護士に聞きました。
●2人は詐欺罪の共同正犯が成立する
知人の姉が行った「替え玉」出頭というのは、いわゆる身代わり出頭と言われているものですね。
身代わり出頭は、真犯人への捜査を妨害するものとして、日本の刑事司法作用を犯す重大な犯罪になっています。刑法103条には、犯人蔵匿罪と犯人隠避罪が規定されていますが、「蔵匿」とは場所を提供してかくまうこと、「隠避」とは蔵匿以外の方法と定義づけられますので、身代わり出頭は、犯人隠避罪の構成要件に当たることとなります。
一方、知人の行為についても考えてみましょう。知人は姉に身代わり出頭してくれ、とそそのかしている訳ではないので、教唆犯が成立する訳ではありません。せいぜいほう助犯ということでしょうが、この件で知人の方が刑罰を受けることはないでしょう。
しかし、酒気帯び運転で単独事故を起こしながら、保険金を受け取っていることは知人も姉も問題です。通常、酒気帯び運転での事故で、保険金は出ないことになっているからです。
ですから、保険会社から保険金をだまし取ったということで、二人には詐欺罪(刑法246条1項)の共同正犯が成立するものと思われます。
ただ、姉は警察から発覚する前に自首するという意向を示していますので、自首できれば、刑は減刑されるものと考えます。