車道をスイスイ進んで行くカートの群れ。まるで本物の「マリオカート」を見ているようだが、このような光景を東京都内の路上で見かけることがある。ゲームキャラクターのコスプレをしていることも多く、楽しそうに走っている。
サービスを展開している「マリカー」のサイトによると、普通運転免許(オートマ可)があれば誰でも運転ができるそうだ。アクションカメラなど、より楽しさを増すようなオプションもついている。
ただ、このカートは街中を走っていると、他の車と比べて、明らかに違和感があるが、道路交通法上はどのような位置付けなのか。和氣良浩弁護士に聞いた。
●法律上は、「原動機付自転車」であり「自動車」でもある
「今回のようなカートをはじめ、公道を走行しているレーシングカート(いわゆるミニカー)に違和感を感じるのは、ミニカーを『原動機付自転車』と『自動車』のいずれかに区分して見てしまうからでしょう」
和氣弁護士はこのように指摘する。その区分にはどんな意味があるのか。
「たとえば、『自動車』であれば、座席ベルトの着用義務がありますし、『原動機付自転車』であれば、交差点における二段階右折義務やヘルメットの着用義務がありますが、ミニカーにはこれらの義務がありません。
その理由は、ミニカーは道路交通法上は『自動車』に、道路運送車両法上は『原動機付自転車』に位置づけられるからです(総排気量、定格出力、車室の有無、輪距など、各法令の規定を満たしていることを前提とします)。
上の例で言えば、ミニカーは、道路交通法上の『原動機付自転車』ではないので、交差点における二段階右折義務やヘルメットの着用義務はありません。一方で、道路運送車両法上では『原動機付自転車』に定義されるため、座席ベルトの設置義務がありません。
そして、道路交通法上『自動車』には座席ベルトの装着義務がありますが、道路運送車両法上、座席ベルトの設置義務があるものが対象となっています。ミニカーは座席ベルトが設置義務がないので、装着義務がありません」
複数の法律がからんで、ややこしいことになっているようだ。なぜ、同じ言葉でも法律によって定義が異なったりするのだろうか。
「法律によって定義が異なるのは、それぞれの法の目的に違いがあるからです。
道路運送車両法は、車両の安全性の確保等を目的としている一方、道路交通法は道路における危険を防止や交通安全等を目的としているので、定義に違いが生じています。
したがって、ミニカーは各種法令の目的にしたがって、『原動機付自転車』の規制や『自動車』の規制が適用されることとなっています。
どの規定が適用されるか理解せずに運転をすると、各種法令に違反する可能性がありますので、きちんと適用法令を認識することが重要となります」