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着用率わずか3割、後部座席シートベルト未着用に「警報」義務化、現状の罰則は?
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着用率わずか3割、後部座席シートベルト未着用に「警報」義務化、現状の罰則は?

国土交通省は11月18日、乗用車の助手席と後部座席でシートベルト未着用の際に警報音が鳴る装置の設置を義務付けると発表した。報道によると、早ければ来年6月にも省令を改正し、数年後に生産される車から義務付けられることになりそうだ。

2008年から、後部座席のシートベルト着用は道路交通法で義務化されている。しかし、着用率は一般道でも3割台などと低い。後部座席でシートベルトを未着用の場合、どのような罰則があるのか。中川龍也弁護士に聞いた。

●どのような罪になるのか?

「後部座席のシートベルトを未着用の場合、刑事罰や反則金の定めはありません。ただし、高速道路走行中に後部座席のシートベルトを未着用であれば、違反点数が1点と定められています。

なお、道路交通法第71条の3第2項には、後部座席のシートベルト着用義務の規定があります。ここで『自動車の運転者』は、座席ベルトを装着しない者を乗車させた状態で自動車を運転してはならないと規定しています。つまり、後部座席のシートベルト着用は、自動車の運転者の義務となっているのです。

したがって、後部座席のシートベルトを未着用の場合には、自動車の同乗者ではなく、運転者が違反点数1点のペナルティーを受けることになります」

●未着用で交通事故にあった場合には・・・

事故にあった場合、どうなるのか。

「走行中の自動車にシートベルトを着用しないまま乗車して事故にあってしまった場合、多くの裁判例で、シートベルト未着用の同乗者に10%程度の過失が認められています。同乗者にシートベルトを着用させる道路交通法上の義務を負っているのは、前述したように、あくまで運転者であり、同乗者ではありません。

しかし裁判例上は、『シートベルトをするか否かは、運転手の指示にかかわらず、自動車に乗車する者が自分の身は自分で守るという趣旨から自らの判断で行うべきもの』との考え方から、同乗者にも過失を認める傾向があります。

よって、義務付けられたシートベルトをしないことで事故にあった場合、運転者以外の者にも過失が認定される可能性は高いといえます」

●シートベルト未着用で頭部骨折の事例も

また、中川弁護士は、数多くの交通事故事件と関わってきた経験をもとに、次のように指摘した。

「当然のことですが、シートベルトを着用しないで事故にあってしまった場合、着用していた場合に比して、圧倒的に被害者の方の怪我の症状は重く、治療にも時間がかかります。フロントガラスに頭部を強く打って、頭部を骨折したり、重度のめまいの症状が残ってしまったという方もいらっしゃいます。

交通事故は自身が慎重な運転をしていても、相手がよそ見運転するなどして巻き込まれてしまうことも多々あります。運転者か否かを問わず、皆がシートベルト着用し、『自分の身は自分で守る』という意識をもつことが大事だということを強くお伝えしたいです」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

中川 龍也
中川 龍也(なかがわ たつや)弁護士 中川龍也法律事務所
立命館大学卒。平成22年弁護士登録(京都弁護士会所属)平成28年11月に中川龍也法律事務所を設立。主な取り扱い分野は交通事故(主に被害者側)事件。

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