高速道路を走っていたら、前の車が急ブレーキをかけた! こんなヒヤリ体験をした人たちから「高速でやんなよ」「ほんと危ないからやめてほしい」などの怒りの声がネット上に複数あがっている。
どんなに車間距離を取っていても、止まりきれずに追突してしまうかもしれない。後続車が迫っていれば、挟まれるおそれもある。
事故が起きてしまった場合、誰の責任になるのか。西村裕一弁護士に聞いた。
●正当な理由のない急ブレーキは「道交法違反」
ーー前方車の急ブレーキによって事故を起こした場合、後続車にも責任はあるのでしょうか。
高速道路では、原則として駐停車が禁止されています。
「自動車は、高速自動車国道等においては、法令の規定若しくは警察官の命令により、又は危険を防止するため一時停止する場合のほか、停車し、又は駐車してはならない」 (道路交通法75条の8第1項)
そのため、高速道路上で正当な理由のない急ブレーキをかけた場合には道路交通法24条に違反するものとして、前方車の過失が大きくなります。
「車両等の運転者は、危険を防止するためやむを得ない場合を除き、その車両等を急に停止させ、又はその速度を急激に減ずることとなるような急ブレーキをかけてはならない」 (道路交通法24条)
他方で、後続車にも一定の車間距離をあけて走行する義務、前方注意義務があります。したがって、このような事故の基本的な過失割合は前方車:後続車=50:50が目安になっています。
ただし、追い越し車線で前方がまったく渋滞していないにもかかわらず、あえて急ブレーキを踏んだ場合などは、後続車に過失があるといえるのか慎重に判断すべきでしょう。私としては、このような場合は前方車の責任とすべきだと考えます。
事故状況が客観的に明らかにならないと過失割合でトラブルになる可能性も高いため、ドライブレコーダーの映像は高速道路での追突事故でも役に立つでしょう。
●前方車:後方車=0:100になる場合も
ーーそもそも、正当な理由があると認められるのは、どのような場合でしょうか。
たとえば、すぐ前方で事故が起こり、そのまま通行することができずにブレーキを踏んで停止しようとした場合などが考えられます。
このような状況で後続車が追突した場合は、前方車の急ブレーキに正当な理由があるといえるでしょう。通常の追突事故と同様に0:100になる可能性があります。
ガス欠や整備不良によるエンジントラブルで停止せざるを得ない場合も、やむを得ない停止といえるでしょう。ただし、この場合は、前方車にも一定の責任がありますので、前方車:後方車=40:60が目安になります。
このように、高速道路上の追突事故は、前方車の停止状況によって過失割合が変わります。