YouTuberのヒカルさんが12月1日、「警察の方々にお世話になってしまいました」と題した動画を投稿。車の車検証が切れており、警察に聴取されたと説明した。
ヒカルさんによると、時間帯右折禁止の場所で右折したところ、警察官に止められ、車検証の提示を求められた。そこで、車検が切れていることが分かり、車はそのままレッカー車で運ばれたという。
ヒカルさんは「東京来てから自分で全然(車検の確認を)やったことなくて。もう完全にこちら側が100%悪いんで、そこは反省して、今後こういうことないようにしようと思いました」と話した。
ファンからは「今回の件はズボラや管理ミスで済ませない方がいいと思います」「事故起こす前に気づけて良かったですね」などの声が寄せられている。
ヒカルさんのように車検が切れたまま公道を走った場合、どのような罰則があるのだろうか。西村裕一弁護士に聞いた。
●「うっかりでは済まされない」
——車検が切れたまま公道を走った場合の罰則について教えてください
車検が切れた自動車を公道で走らせてしまった場合、運転者は道路運送車両法により6か月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられます(58条1項,108条)。
このように車検を切らしてしまった場合、事故がなくても刑罰が科せられる行為ですので、決して「うっかり」では済まされないものです。
また、運転者の免許証の点数は6点引かれますので過去に違反歴がなくても即免停(30日)になります。
そして、今回のような法人車両の場合、道路運送車両法111条により、会社にも罰金刑が科される可能性もあります。
●「無車検かつ無保険」であった場合の罪は?
——車検が切れる=自賠責も切れるということでしょうか
必ずしも「車検が切れる=自賠責が切れる」わけではありません。当初契約した自賠責保険の有効期間と車検期限が異なる可能性もあるためです。自賠責保険の契約期間を車検の翌月まで(25カ月)として契約することもあります。
しかし、多くのケースでは、車検のタイミングで自賠責保険の契約も行っていますので、車検が切れるということは自賠責保険も切れるケースが多いのが実情でしょう。
なお、車検を通すためには自賠責保険の加入が必須になります。
自賠責保険切れの自動車を公道で走らせてしまった場合、運転者は自動車損害賠償補償法により1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられます(5条、86条の3)。
今回のケースで、無車検かつ無保険であった場合、併合罪として1年6か月以下の懲役または80万円以下の罰金の可能性があります。
●車検切れの車で事故を起こしたら「さらなる罰則も」
——車検が切れた車で事故を起こした場合、どのような処分になるのでしょうか。
車検が切れた自動車で事故を起こした場合は、上記で説明した処分に加えて、事故の罰則が加味されることになります。
物損事故の場合には、軽微であればおそらく無車検車運行の罪のみで処罰されることになりますが、人身事故の場合には過失運転致死傷罪にも該当するため、無車検車であれば行為態様が悪質と判断されてしまいます。不起訴や略式での罰金では済まず、起訴されて懲役刑の刑罰を受ける可能性が高くなってしまうでしょう。
また、自賠責保険や任意保険が切れていた場合には、保険がないため、加害者本人が被害者に対して賠償をしなければなりません。おそらくヒカルさんは経済的には問題ないでしょうが、無保険車は被害者にとって、けがも負わされて、賠償も受けられないといった最悪のケースになりかねません。
したがって、そのような被害者を出さないためにも、必ず車検を通してこれを切らさないようにすることが、車を保有する人にとって最低限必要なことです。