弁護士ドットコム ニュース
  1. 弁護士ドットコム
  2. 交通事故
  3. 危険な「傘さし運転」が増える季節か…法律上「罰金5万円」になる可能性あり
危険な「傘さし運転」が増える季節か…法律上「罰金5万円」になる可能性あり
傘さし運転はあぶない(弁護士ドットコム撮影)

危険な「傘さし運転」が増える季節か…法律上「罰金5万円」になる可能性あり

雨の日に傘を差して歩いている人に対する違和感はない。だが、傘を差して自転車に乗っている人に対してはどうだろうか。

傘さし運転はそもそも、視界が悪くなるし、風にあおられたりすると非常に危険だ。すれ違う人にも迷惑がかかる。

近ごろは少なくなったような気もするが、それでも雨の日の「傘さし運転」はちらほらと見かける。ネット上にも目撃情報はあがっている。

厳しい声も聞こえてくるが、はたして、傘さし運転はどんな法的問題があるのだろうか。交通問題にくわしい平岡将人弁護士に聞いた。

●5万円の罰金になるおそれ

――傘さし運転は法的に問題ないのでしょうか?

傘さし運転は規制されていますが、その仕方は、都道府県によって異なります。

まず、道路交通法71条は、車両等の運転者が守らねばならないルールを定めています。なお、自転車も「車両等」に含まれています。これは全国共通です。

そして、この中には「道路または交通の状況により、公安委員会が道路における危険を防止し、その他交通の安全を図るため必要と認めて定めた事項」も守らなくてはならないとされています。

道交法で定めきれない地域に合ったルールを、各都道府県が独自で定めようというものです。

たとえば、東京都の場合、都道路交通規則8条3号で「傘を差し、物を担ぎ、物を持つ等視野を妨げ、または安定を失うおそれのある方法で、大型自動二輪車、普通自動二輪車、原動機付自転車または自転車を運転しないこと」と規定されています。

つまり、東京都では、傘を差して自転車を運転した場合、道路交通法71条6号に違反することになります。

そして、道交法71条6号に違反した者は、5万円以下の罰金に処せられます(120条9号)。

――東京都以外の規制はどうなっているのでしょうか?

今回、47都道府県について調べてみたところ、どこも何らかのかたちで傘さし運転を規制していますが、その表現には違いがあります。

たとえば、茨城県は「交通頻繁な道路において、傘を差して自転車を運転しないこと」、三重県は「かさをさして(車体に固定した場合を含む)、自動二輪車、原動機付自転車または自転車を運転しないこと」となっています。

詳しくは、各都道府県の道路交通法施行細則を調べてみるとよいでしょう。

●事故の責任も重くなる

――傘さし運転で事故を起こした場合、どうなるのでしょうか?

数年前、歩道を歩いていたとき、前方から来る自転車の傘が、何かにぶつかって方向を変え、傘の尖がった部分が私の顔をかすめたことがありました。目に当たっていたら、と思うと非常に怖い思い出です。

さて、民事の損害賠償の場合、過失割合といって、双方の道路交通違反の程度などを考慮した、事故に対する責任割合があります。

たとえば事故に対してAさんが3割、Bさんが7割の過失割合があると、BさんはAさんの損害の7割を負担し、AさんはBさんの損害の3割を負担するということです。この交通事故であれば、事故で生じた損害を、過失割合をもとに負担することになります。

一般的に、傘さし運転は、片手運転など正常な運転ができない状況でありますし、傘を維持するために安全注意義務も散漫になりますから、自転車運転者の事故に対する責任(過失割合)上げる要因になります。具体的には、1割加算されることになるでしょう。

以上は民事における損害賠償の話ですが、交通事故で相手にケガをさせると過失致傷等で罰せられることもあります。ただ、これは単に「傘を差していた」という事情はもちろん考慮されますが、そのほかの事情(被害者のケガの程度やその他の道路交通法違反の程度)を踏まえて総合的に判断されます。

――自動車とぶつかった場合はどうでしょうか?

自動車との事故でも、先ほどの場合と同様となり、事故に対する過失割合の問題となります。

私も毎日、子どもを送りに自転車に子どもを乗せますが、雨が降っているときは、つい傘を差したくなります。

当然、人にケガをさせる危険の高い行為ですから、慎むべきなのですが、万が一、自動車と衝突して子どもがケガをしてしまった場合、子どもの賠償金額が、自分のせいで低くなってしまうことになります。

自転車は、身近な乗り物ですから、つい油断して歩行者と同じ気持ちで乗ってしまいますが、「車両」であることを強く意識して、傘さし運転をしないようにしたいですね。

プロフィール

平岡 将人
平岡 将人(ひらおか まさと)弁護士 弁護士法人サリュ銀座事務所
中央大学法学部卒。全国で10事務所を展開する弁護士法人サリュの前代表弁護士。主な取り扱い分野は交通事故損害賠償請求事件、保険金請求事件など。著書に「交通事故案件対応のベストプラクティス」ほか。実務家向けDVDとして「後遺障害等級14級9号マスター講座」「後遺障害等級12級13号マスター講座」など。

オススメ記事

編集部からのお知らせ

現在、編集部では正社員スタッフ・協力ライター・動画編集スタッフと情報提供を募集しています。詳しくは下記リンクをご確認ください。

正社員スタッフ・協力ライター募集詳細 情報提供はこちら

この記事をシェアする