「全席禁煙にもかかわらず、加熱式タバコを隠れて吸う客が居ます」。こんな相談が弁護士ドットコムニュースのLINE@に寄せられました。
相談者は、宮城県でファミレスの店長をしている40代女性。店は全席禁煙ですが、その客は一番奥の座敷に座り、店員側に背を向けた状態で加熱式タバコを吸っていたそう。
女性が臭いに気づき注意すると、加熱式タバコを隠し何もなかったような態度をとられました。しかし、退店後のテーブルには、吸い殻が並べられていました。
女性は「禁煙なのに加熱式タバコもダメな事くらい常識で分かっていると思います。6〜7人での来店でしたが、その中で注意する人も居ないのが残念です」と話します。
このような客が来店した場合、「お帰りください」と退店を命じることは法的にできるのでしょうか。
●退店を命じることができる
石井龍一弁護士は「客として誰を立ち入らせるかは、原則としてお店の側で決める権利があります。全面禁煙の飲食店で喫煙をしている客がいれば、店側はその客に退店を命じることができます」と話します。
厚生労働省は加熱式タバコについて、「主流煙に健康影響を与える有害物質が含まれていることは明らか」としながら、「加熱式タバコの受動喫煙による将来の健康影響を予測することは困難」として研究や調査を続けることが必要としています。
加熱式タバコの場合はどうでしょうか。
「飲食店が店内を全面禁煙にするのは、副流煙の受動喫煙による他の客の健康被害を防止するという目的でしょうから、そのような健康被害がないというのなら、吸ってもよいということにもなりそうです。
しかし、加熱式タバコの受動喫煙による健康被害の可能性が全くないと断定されているわけではありません。仮にその恐れがないとしても、飲食店が店内を全面禁煙にする目的は、店内にタバコの臭いが出ないようにする、店内の雰囲気をよく保つなど、他にも考えられます。
したがって、店が全面禁煙としている以上、加熱式タバコであっても、喫煙している客に退店を命じることができると考えられます」(石井弁護士)
●加熱式タバコも規制対象に
2018年7月には、改正健康増進法が成立しました(五輪前の2020年4月に全面施行)。学校や病院をはじめ、多数の人が利用する施設について屋内は原則禁煙とし、加熱式タバコも規制対象に含まれています。
2020年東京五輪の会場は、加熱式タバコを含めて、競技会場の敷地内全てが全面禁煙となります。お店や街中でたばこを吸う人を見かけることが少なくなりそうです。